見殺しのランス 1 (邪な望みへの道程)


翌日はベイルとリアを伴って俺は、魔窟入りをしていた。

「リア、右から三体、ゴブルだ斬撃!」

見通しの悪い魔窟の右の分かれ道にリアが切り込んでゆく。

最初のエリアと言えば小柄な人型のゴブルがほとんどだが、希に大型のオルクや群れをなして飛び回るアズバットも現れる。

武器や防具を扱うオルクもそうだが、各種の状態異常をもたらすアズバットも囲まれれば意外と手ごわい。

周囲を索敵し情報をもとにした戦術を支持するベイル。

リアの手に余る相手は動きを止め攻撃を防ぎ補助に徹底する。


多分ベイルの奴が単独でもこの先のエリアまで進めることが出来るんだろう。

驚異的な魔導力と膨大な魔獣の知識と戦術や戦略の判断力。

今日の内にベイルとリアの二人が俺たちの到達エリアまで着くのも間違いない。

付いてくる必要もなかったと、欠伸を噛み殺しながら俺はあとをゆくばかりだった。


そんななか俺は久しぶりに背筋が寒くなる感覚を覚えていた。

それは敢えて言葉にすればゾクリといったようなものだ。

俺にしかわからない感覚、俺にさえ上手く言葉にできない感覚、つまりやばいってことだ。


以前の俺なら、大げさにこのことを伝え皆と口喧嘩になり撤退の時期を逃したうえパーティーの瓦解をもたらした物だが。

今では呆れるほどの弱気な方針ゆえそのようなことはなかったが。

そしてこれまで通りそのことを伝えてみれば、馬鹿正直に素直な俺の弟子は言葉を真撃に受け止めてくれる。

「探索の魔導の反応は平凡なオルクとして出てますけど、師匠がそう告げるなら魔導に現れない異質な力があるのでしょう。リアに様子見をさせます。そしてそのうえでまずければ撤退とゆうことで」

俺としては非常にやばいと思ったがベイルの奴がそれでよければ構わないとした。

「リア、先ずは牽制の斬撃だ」

まだ遠く離れた魔獣に向かいリアの奴が構えをとる。

ベイルの奴が何かの魔導を発動し、俺とともに後方にとさがり様子を見る。

その様子を見ながら俺は、自分の直感に従い更に後方へと駆け出した。

そして背筋の寒気をまた感じたのと同時に俺はエスケイプを唱えていた。


魔窟の入口に現れたのはやはり俺だけだ。

今一度戻ろうかと以前の俺からは及びも付かない考えが浮かんだ時、ベイルの奴が戻ってきた。

血だらけで。

そして、奴だけで。



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