創世神話   (トレデキム  漆黒の邪龍 ダーティードラゴン)


「ファン、今までどうしていたの?」

小走りにかけよる人物が声をかけてくる。


「取り敢えず掛けたまえ、ステラ嬢」

立ったままの彼女に、私は同席を促した。

「あ、すいません…失礼いたします。それと…先程は寛大なる処置をあり…感謝いたします」

向かい合っている男がその様子を興味深げに見守っている。

「…面白いものが見られたなと思ってな」

意味ありげに私が彼をみるとそんな応えが返ってくる。

「私だってちゃんとするわ…たまにはだけど…」

頬を膨らます少女に対して彼は微かに微笑んでいるかのようだ。


このような空間も嫌いではない私は、年長者としてある逸話を話そうと思い立った。

「君たちの会話に水を差すわけではないが、一つ使徒としての私から『何故の訳』について話をしよう」

私の提案に少女は頷いたが、向かいの彼は無関心を装ったままだ。

だが、彼の無関心が拒絶ではないことを理解する私は、構わずに話を始める。


「創世神話と云うものを君たちは知っているかね?」

「はい、聞いております」

「…データとしては持っているみたいだな、読み取りはないが」


相変わらずのふたりの反応だが、構わずに続けよう。


「正確には創世の記録なのだが。このアルタイル銀河の帝国創世の記録の事だ」

「その昔、正確には…いや、年月など話の内容については関係が薄いのか…。その昔、隣の銀河よりある開拓団がこのアルタイルへと飛来してきた。ワープ航法とコールドスリープを併用し長き年月をかけてだ」

私の言葉に疑問を挟みたがってるようだが、質問はあがらない。

「そこで開拓団はある生命体と接触する、シーカーズと自らを呼ぶそれとの接触から記録は始まる。シーカーズは開拓団を隣接する銀河よりの来訪者と理解すると、既にそれは探査済みと興味を失い離れて行ったが一つ彼らに道しるべを示唆した。バンクに迎えと。そこに全てがあると」


「…シーカーズ」 「…」

所謂創世神話では語られぬ事実を語ると、少女からつぶやきが漏れた。


「そこで、とある教授をリーダーとする開拓団は後の帝国をなすこの星系と訪れ、この銀河の全てを内包するバンクと接触しそのリーダーである教授はバンクと融合を果たした。そこでその教授は、銀河に点在する各種現住生命体を知りその調査を始める。愛してやまぬそれらの生命体のことを」


「…それが私たちのことなのですね」 「…」

「その教授…プロフェッサーの多くの興味の中の最大の興味が、君を含む彼らだったのだ。そして、教授の一部を持つファング君が君を愛することはそう言った因子も関係している。勿論、君自身の魅力も大いにあるとは思うがね」


「…」 「…」

私の言葉に少女は顔を赤らめ、同じように黙ってしまった。


「そして、プロフェッサーから分けられた我々『使徒』も同じことが言える」

「…」 「全て…好きってわけじゃないんだが、…その傾向は…あるな。逆にあいつらになつかれるその傾向はなんなんだ?」

珍しく彼からの問いかけだ。


「それは、我々が興味を示すように彼らも外来よりの来訪者が物珍しからではないか?その思考も行動も今までのものとは違っていたからね」

「………」


「私からの話はこのくらいだ、ちなみに今回の騒動の大元は、とあるエルフィーがもたらしたものだ。どうやらファング君は、かの者に大きな興味をもたれているようだな」

「ガーディーの奴…」

「…ファンは知らなかったの?」



「ええ、彼にはいつも黙っていたから」

不意にかけられたその言葉は、新たに訪れたある者によるものだった。




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