出会い  ( 官能小説 迷子)


駅の近くでタクシーから下ろされた俺は、すっかり迷子になっていた。

地方都市への出張で今朝支店についたのだが、荷物の整理と挨拶を終えこの先の事を考え辺りを探索することにしたのだ。

なんせ出張期間は最低でも三ヶ月あまりで、今まで都心から離れたことのない俺は、仕事の後や休みの間の時間の充実を図ろうと思ったからだ。

だが、仕事以外に特に趣味もない俺は、せいぜい酒を呑むかギャンブルに明け暮れる程度で、楽しめる呑み屋やパチンコ屋などを見つけておこうと考えたからだ。

支店の寮からタクシーを呼び運ちゃんに繁華街を尋ねる。

最寄りの駅から二つばかり行ったところがどうやらこの辺りの遊び場らしく、運ちゃんの薦めを受けてその駅前の繁華街まで来たのは良かったが、面白そうな店は開店までまだ間があるらしく何処も締まっている。

せっかくの出てきたからには、何処かで一杯と思い辺りを彷徨っていたらすっかり人どおりから外れ日も暮れ出して寒さが身にしみてきた。

帰りはまたタクシーを拾うなり、こんな場所で拾えるのかは知らないが…道を訪ねて駅に向かえば寮までは戻れるだろう。

冬も終わりとゆうのにこの地方は都心より北にあるだけに余計に寒い。

取り敢えず選り好みはやめて目に付いた普通の居酒屋の暖簾を俺は潜ることにした。


間口の狭いその店はお決まりのカウンターと僅かばかりのテーブルが並び、俺はまだ客も入ってないそのカウンターに腰を据えてみた。

「らっしゃい…呑みものはどうするんだい?」

仕込みの途中なのか店のオヤジが、忙しく手元を動かしながら顔も上げずにそう聞いてくる。

「それじゃあ熱燗で」

そんなオヤジの態度を気にすることもなく俺は、並んでる酒瓶を眺め注文をする。

「はいよ、熱燗。それとこいつはお通しだ」

ごついおちょうしと盃が出され、小鉢に盛られた何かのつまみを受け取る。


取り敢えず酒を注いで最初の一杯を呑みほしてみた。

僅かにやけるのどごしと染みる熱さが身体を内から温めてくれるようだ。


「こいつはこの辺りの、地元の酒かい?」

「ああそうだ。お客さんは旅行か何かかね」

俺の問い掛けにオヤジは嫌がることもなく答えてくれた。


「ああ、都心からさ。まあ、出張なんだけどさ」

たわいのない話を続けながら、酒をのみほすと、頼んでもいないのに熱燗のおかわりが出された。

「都心からじゃ此処の寒さはこたえるだろう。これは俺からの奢りだ」

そう言ったオヤジは初めてそのいかつい顔をにやりと和ませた。

「ありがとよオヤジさん。なんなら俺から一杯奢るけど構わないかい?」

「ああ、まだ客も少ねえからな、ありがたく頂戴するよ」

オヤジはさらにおちょうしを用意して自らも盃をかたむけた。


そんな時店の入口が引かれる。

騒がしい話し声にほかの客が入ってきたようだ。

その客は女三人組で三十路に近い俺よりも随分と若く見える。

一人だけ歳が近そうな感じだが、仕事の先輩後輩だろうか?。

そのまま姦しくテーブルの方に座った彼女らは口々に注文を始める。


忙しくなったオヤジとの話を諦め、カウンターでちびちびと呑んでいると、後ろの席で俺のことが話題になったらしく大きな声でオヤジと話を始めた。

どうやらあまり見かけない俺に興味があるようだ。


「オヤジさん席を移ってもいいかな?」

「そっちのお姉ちゃんたちがよけりゃあ構わないがな」

オヤジの了承をもらい俺は振り返る。


「ねえ君たちは地元の子?ボクは出張でこの辺りに今朝来たばかりだから地元のことを少しばかり教えてもらえないかな?相席させてもらってもいいかな?」得意の営業スマイルで問いかける。

「いいですよおーお兄さん。一緒に呑みましょう」中でも若そうな一人がそう答えてくれた。

「じゃ、オヤジさん俺はあっちに移るから」

「随分と態度がちがうじゃねえか」

杯とおしぼりだけをもってテーブル席へと移る俺の背にそんなオヤジのつぶやきが聞こえたが俺は愛想笑いを浮かべたまま構わずにテーブルへと割り込んだ。


「改めて今晩は、ボクは秋津って言います。仕事の関係で三ヶ月ばかりこっちに居ることになったんでよろしくお願いします」

「私たちはこの近くに住んでるけど、秋津さんもそうなんですか?」

「残念だけど二駅ばかり先の方なんだ。会社の寮がそこにあるからね。でも、あの辺りは住宅街で呑み屋とかなさそうだったから、タクシーで聞いてこっちまで来たんだ」

「そうですよね、あの辺りは何もないからー」

地元だけあって直ぐに理解してくれたようだった。


「なんか時間が早かったみたいで駅まで降りたのはいいけど、何処も開いてなくてフラフラしていてこの店にたどり着いた訳。都心だとその時間でも結構開いてる店もあるんだけど…」

「都心の方から来たんですか?」

「うん、中心ってわけでもなかったけどね」

「へえー」

やはり珍しいのだろうか。特に観光地でもないこの辺りは仕事でもない限りよそから人も来ることがないらしい。

「やっぱり都会は違うわね」

顔を見合わせそんなことを言い始める女の子たち。


「そう言えばみゆき先輩は、東京の生まれでしたよね」

今まで口を挟むわけでなくただ飲んでいた女性に若い子が問いかける。

頷くだけで返事をしたままその女性は俺などに興味がない素振りで一言も話さないままだ。

「そっちの先輩?はみゆきさんなんだね。それで可愛い君の名前は?」

「あっごめんなさい、私はほのかって言います。それで同僚のこの子はあかり」

「あかりです」

慌てたように名乗った女の子はそう告げて隣の子をそう紹介してくれた。

「ボクは下の名前は孝之で、みゆきさんにほのかちゃんにあかりちゃんだね。改めてよろしく」

若い子相手に接客モードを発揮する俺。

「この出会いに乾杯をしようか?みんなは何呑んでるの?」

「私たちはサワーとかです」一番元気なほのかちゃんが答えてくれた。


「オヤジさんこの子達の呑んでる奴をおかわりで。それとボクには熱燗をもう一杯」

俺はカウンターへ振り向いてそう告げる。


「おつまみはどう?勿論これもボクの奢りだから」


「秋津さん太っ腹」

はしゃぐようにほのかちゃんが声をあげた。

「そこは名前で」

笑顔とわざとらしい困惑を交え俺がこたえる。


そんな感じで会話が続き、おとなしめのあかりちゃんも少しづつ話に加わり出張先の夜は華やかなものになっていった。


彼女達の勤め先はこの店の近くらしく仕事上がりでよく顔を出すらしい。

もっとも寡黙なみゆき先輩とやらはあまり付き合わないそうだが。


俺も彼女たちも明日は仕事休みとゆうことで、ほどほどに食べほどほどに呑みその場はお開きとなった。

「それじゃあお先にー。電車の時間があるから私たちは帰りまーす。秋津のおにーさんごちそうさまでしたー」

呑みすぎた感じのあかりちゃんを伴いほのかちゃんが席を立つ。


「大丈夫?送って行こうか?」

俺の言葉に彼女がふざけたように答える。

「大丈夫ですよー、まだ電車もあるしこの子も連れてかなきゃならないし、そうゆうのは私一人の時にお願いします。じゃっ」

来た時のように姦しく店を出てゆく女の子たち。

俺も店を出ると遠くの方でまたほのかちゃんがこちらに向かい手を振っている姿が見受けられた。


「さて、どうしようかな」

俺がそんなことを呟いて同じく駅にと歩いて行こうとすると、不意に声がかけられた。

「まだ帰らないのなら付き合ってもいいわよ。あの子達と違って私は近くに住んでるから」


それは思いがけない誘いであった。







官能と銘打って 官能部分まで 書ききれなかった

次回は ちゃんと 書きます…( ̄▽ ̄)

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