行為 1    (恋愛小説 埋没)


薄暗く見知らぬ部屋の中で、組み敷かれた見慣れぬ女の瞳がボクを見つめる。あくまでも切なげな眼差しとは裏腹な口元が何かを言い出す前に、聞きたくない言葉を紡ぐ前にボクは、自らの唇で其れを塞いでいた。

何をやってるんだろう。

どうしてこうなった。

行為の最中にはふさわしくない不埒とも言える思いが又沸き起こる。


初めて逢った日にすぐに深い関係に。

新手の詐欺か?単なる流れなのか?。

何も言われぬままに抱き合って、何も警戒なく何もつけずにしてることに今更ながら気付いてしまったボクは、今日はいけないなと予感しながらも、あまりの疲れのあまりひたすらに行為に没頭するだけだった。


温もりと安らぎを貪るようにただ、突き続ける。

流れ落ちる汗と慟哭は、薄暗く肌寒い妙に虚ろなこの部屋には似つかわしくないものに思えてしょうがない。

組み敷いたはずの女の身体も朧げに儚く思え、白日夢のように不意に消えてしまいそうな怖れを覚えてしまう。


何を求めているのだろう、ボクは。

どうしたいと云うのだろう、ボクは。


デジャブのようなシチュエーションを追いかけたまま、終わりのない行為をおわりまで続けることしかできずにボクは、ただ汗を流し続けるだけだった。



「…ごめん」

そう言ってボクは、組み敷いていたミハルの身体から身を起こす。

「疲れちゃったの?疲れがたまってるのね、私が上になるから、マサルは寝転がってていいよ」

そう言って身を起こした女は、いけないボクに跨って深く腰を落としていった。


「こんな…に…元…気なのに………ね」

ボクの身体の上でゆらゆらと動きながら女が囁くように言葉を垂れ流す。

自らがリードしているためか、先程より言葉が途切れがちだ。


「疲れすぎていけないのは、いつものことだから気にしないでね」

いけない自分をごまかすように、ボクはそう女に向かい嘯いていた。



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