接触 3   (トレデキム  漆黒の邪龍 ダーティードラゴン)


「やれやれ…」

5セク程経過しただろうか、彼が反応を示した。


「…普通は名乗るのが常識だろ?初対面なんだから」

彼が言葉を続ける。


それを認識した私は、個別体としての自身の対応を選択することとした。

「…ああ済まなかったね、個別体としての私はトレデキムだ。そもそも個別体とは…」

「説明はいらない。プロフェッサーのデータなら持っているし…そのことは覚えている」

「…ドラゴンは忘れないだったね」

私は群体として共有する記憶層の中から正解だろうと思われるワードを導き出した。


「で、何のようだ?あんたは」

特に目を合わせることもなく応える彼に、私は最初の問い掛けの続きをすることにした。

「私はいつもこの時間に此処に訪れるのだが、同じように朝此処に来ている君に始めて会った事と、この時間帯にあえて此処に来た理由が何かあるのかと、君に問いたいのだ」

個別体としての私が認識を覚えた些細な疑問を述べてみた。


「…別に…たまたまだ」そっけなく彼が応える。


「君がこのメトロに再び生活空間を戻した2イヤと136デ前から数えれば、始めて会えたことに驚きを認識してね。無論私はそれ以前から此処に通っているわけなのだが」

「酔狂だな…だが、たまたまだ。いつもの時間よりたまたま早く目が覚めちまって、たまたま此処に早めに来ただけだ」

実にくだらないといった表情らしきものを浮かべ答えがかえる。


「偶然などはなく必然しかないと言ったのは皇帝だが、実に新鮮なこの出会いを私もそう認識する」

「やれやれ…ますますもって酔狂なやろうだ…」

「では、この新鮮な出会いに少しばかり話をしようじゃないか?」

私の言葉に肩をすくめ呆れ顔を浮かべたまま彼がこちらを向く。

これは肯定の証だなと認識した私は、彼に関するデータを補うため会話を続けることとした。


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