限りとて別るる道の悲しきにいかまほしきは命なりけり  小説GENZI その1


「イッテしまうのか?朽ちゆく時も共にと…」

王である男の未練がましい言葉。

その言葉に美姫が冷たく返す。

「哀しみなど…朽ち果てることなど…共に生き永らえる儚き望みに比べれば」

男を見ようともしなかった美姫の言葉は、無論、男に向けたものではなかった。


広大な大陸の帝王たる禍々しき血を受け継いだ我が子の行く末は、たかが小さな島国の頭に過ぎない男と比べる価値もなく、その愛子が自身の全てをはぎ取り生まれ落ちた訳であっても。

サイをチカラをそのニクタイさえも求め喰らう鬼子の行く末を。


なんの後ろ盾もなかった美姫が、この国の王の寵愛を受けることとなったのは、その美しい面立ちばかりだけではなかった。

古き忌まわしき血の力。

大陸より永劫に続いた遠き祖の奇なるチカラ。

その全てを惑わし凋落するチカラを用いて男を絡め取ったのであった。


それは重苦しいばかりの大義のため。

王たる男を凌駕する、覇王、魔王を宿すため。

持てるチカラを若き肉体を削り与え、真なる支配者を現世にと産み落とす。

その為だけに男を一時受け入れたのだった。


それが自身の身の破滅を呼ぶものと、最初は知らずに。


かくしてこの世に再び舞い戻りし厄災の鬼子は寄り代であった美姫の残された僅かな魂までも喰らい終わり、この地に災いをもたらさんと歩みを始める。


儚くも頼りない小国の王の子として。





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