ある ベイグスの事情 10 (SF小説 メトロの住人) 


「問題ない!君は既に軍役を逃れ、私自身も違うシステムに存在するからだ。いわゆる治外法権とも言えるこの場所で、そもそも仮定のやりとりなど何も問題ないわけだ」

事もなげに言い放つ彼?の言葉に意義を挟むものがいた。

「やれやれ、そいつは問題だな…」

それは同じ会場の隣のテーブルからのもの、若い女を連れた黒づくめのちゃらちゃらした外見の男の言葉だった。

「先ず帝国軍人には終身の秘守義務が幾つか存在する。現状、ハイパー通信に変わる技術革新がない限りそいつは軍務規定8009番第二条補足二項これに抵触する。次にいくらこの場所が個人のスペースとは言えこの場所が帝国の領地である限り帝国の法のもとに動乱を促す活動は帝国治安法201改訂三文の罰則を受けることとなるからだ」

ニヤリとした横顔を見せたあと教授がそちらを向いた。

「ファング君、それは軍務経験のない一般人にしか通用しないものだ。私にも帝国軍の軍務経験がある。内輪どおしの問題定義を罰することは規定には記載はされてない。それに君は此処をどこだと思ってるんだ。我がオーバースパイラル空間は内なる銀河であり帝国領とは別の世界だ」

ファングその名の響きに俺の中の大勢の記憶が久しぶりに最大の警鐘を鳴らした。ファングと云う名の生ける死神には決して関わらないようにと。

「さて、問題がないことが判明したことで先ほどの問題について君の意見を改めて求めるのだが…」

俺には会話の内容の問題差よりも、帝国軍内に今も染み込んだままのファングと云う名を持つ男がすぐそばにいることの問題の方に戦慄を覚えていた。



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