序章 1 地上にて 1  (ファンタジー小説 バイオール)


低界に落下し顕在した闇のエレメンタル・ゲノムスは、認識の縮小と自身の存在の希薄さに目眩を感じた。

自由と力と不滅の存在であったいわゆるメーカーの時の開放感とは比べる事も出来ない無力感。

二つの瞳による視界と認識力の束縛、転移阻害や飛行制限を受ける肉体とゆう殻の脆弱さ。

かつての力の半分も持たないその姿は、耐え難い後悔の念を呼ぶばかりであった。

しかし、すぐさま低界に直接介入をするには必要なことであった。

クリエーターの具現による余波に巻き込まれた自身の眷属を認識したからだ。

それは龍族の民草の一人でゲノムスが作りしテューポーンの申す括りでは少女と呼ばれる部類に見受けられた。

なぎ倒された木々からその少女とやらを助けるには、低界での活動のための憑依や転生では間に合わないと判断したからであった。

かくしてゲノムスは本質でもあるエレメンタルパワーを削り物質化をはかり、少女を怯えさせぬよう己が姿を龍族の民へと変態させ少女の前に降り立った。


「あっ?あなたは?」

驚きの声を上げる少女に微笑みながらゲノムスが応える。

「今から其方を助けるわけだが、どうかあまり騒がずにおとなしくしていて欲しい。それと名乗るとすればゲノムスだ」

宙より突如現れたその存在が同じ龍族の姿をしており、その言葉を聞いたことに安心したのか少女は見上げた顔をなんとかうなづかせた。

「さて…このような仮初の姿では、転送や消滅はもとよりこの木々をどかす力さえないな…かと言ってテューポーンのようなドラゴンの姿では怯えてしまいそうではあるし…」

思案の末ゲノムスは真身であるドラゴンへと戻ることはやめて、借りやすい土のエレメンタルの力を使うこととした。

「ああ君よ土の隣人よ我の願いを叶うべくその力を示せよ」

先程のつぶやきとは違う力強き詠唱があたりにと響く。

「ひっ!」

唐突に少女の下の地面が浅く陥没を始めることで、少女が悲鳴をあげた。

「その隙間があれば抜け出せるであろう」

何に驚いているのか困惑した感じでゲノムスは驚き怯えるばかりの少女にそう告げた。

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