蒼き荊棘 1 (小説 娼婦は何でも知っている)


「それにしても、良いのでありますか?隊長どの?」

目の前の若い男が年端もゆかぬ幼い華に腕を絡め取られたまま私にそう告げた。最も幼くとも華ならばその手管に問題もなく、華独特の妖艶さを滲ませて縋るさまは懐かしくも微笑ましくもある。

「無論、問題などない。此度の戦果にしても王都よりやってきたばかりの私なんぞより、諸君らの功績が多大だ。なっ、リリイ?」

傍らに座る館の主人をみやり私はそう告げた。

「街の、いや王国の治安を維持されます警備隊の皆様の戦勝を祝う宴に、この館をお使いくだされることは、主人としては嬉しい限りでございます。例えローゼ…ブルローゼ様が私めの古い知人であったとしてもですけど」

寿命も長く見た目が年若く見えるエルフの女主人が意味ありげに言葉を告げ私を見返した。

「それにしても、あの戦場では鬼神の如きブルローゼ隊長どのが、このような館をご存知とは…。女性とは云え英雄色を好むですか…」

横の男がため息をつくように言葉をもらした。

彼の隣にも当然のように美しい華が控えておりその美麗な顔をはにかんでその逞しい腕に縋っている。

此処は華の館、そうゆう店なのだ。

「何、単にリリイ、この館の主人とは昔ながらの知り合い、いや同僚だったのだよ」

そこまで言いかけて私は、店の入口あたりから聞こえてきた騒動に目をやった。


「なんだあ?この店は!俺様の相手などできねえってゆうのか?」

「ですから再三申し上げるとおりご予約が必要で、百歩お譲りしても今日は生憎控えで待つ華ももうないので…」

どうやら無粋な客が難癖をつけているようだった。

私たちの周りのテーブルにも、そんなマナー違反の行為に白けた雰囲気が漂い始めている。

「少しばかり様子を見てこよう。なに、直ぐ戻るさ」

私はそう告げて、華に囲まれて舞い上がる部下たちを残し席をたつことにした。

相変わらずの好奇心と正義感にじっとしてられない自分自身に自重しながら。





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