ある ベイグスの事情 5 (SF小説 メトロの住人)


「ああやって統計値を分析してみると、問題は見えるもんだな」

Bエールのジョッキを片手に俺は力説を続ける。

此処はタウンと呼ばれる居住エリアの下層地区のバーのひとつだ。


「リトランド、君って奴はほんと仕事熱心だよね」

呆れ顔のノーマルが俺の演説に対してこう答えた。

「うちのところにも君のようなマンティスはいるけど、どちらかといえばプロフェッサーの講義を聴いてるような気がするよ、僕の認識からすれば、君たちはもっと愚直なイメージなんだけどね」

「能天気で攻撃的な俺たちを愚直などと呼ぶ奴はすくねえが、あんな奇人…いや天才と比べられるのは光栄だな」

俺はマイクの言い草に少しばかり驚きをあげる。

「…奇人、確かに。自分の組織のトップをそんな風に呼んだら問題だとは思うけど、その聡明で無限なる思考の持ち主は確かに変わり者だからね」

屈託なく答えるマイク。

ベイグスの俺と違って、お上品なはずのノーマルヒューマンである彼が思ったことを口にすることは意外に思えるが、そのことが俺とこいつを結びつけることになったのは否めない。

今では同僚までになったこいつは、ベイグスである俺の数少ないノーマルの友人だ。


気分をよくした俺は、ジョッキの取ってを断ち切ることでテーブルにそれを置き、鎌をひらひらと振りおかわりを求める。

フェイクアームを使えば、ノーマルの奴らのようにお上品にジョッキを握ることも可能だが、此処はそんな店じゃねえ。

「もう少しデータを集めたら改善できるものはしねーとならねえが、どうだ?」

新しく用意されたジョッキの取っ手に前肢の鎌を突き立てたあと俺は話を続ける。


「改善が利害的に叶うものならばね」

「採算があうとか関係先の利害に抵触がなければ、かまねえと思うんだが」

少しだけ言葉を切り俺の顔を見つめるマイク。


「そうゆうとこが違うかな?僕の知ってるマンティス達や教授と」

「それは俺も奇人の仲間入りってことか?」

「仲間入りなら僕もだよ。とかく彼らや同僚は改革など望まない、それと彼は周りのことなど気にもしてないからね」

笑いを浮かべ答えるマイク。

「まあ、同族の奴らどもの習性は確かにそんなもんだ。…ところでプロフェッサーってのはそんなに変わりものなのか?」

「下っ端の僕はよくは知らないが、上の連中ならそこのところは周知してると思うよ。…リットこのあと時間はあるかい?何ならその辺の話が聞けると思うのだけれど。それと君の提案する改革の実質的な実行プランが聞けるかもしれないし」

「飲み会なら付き合うぜ」

突き刺したジョッキを乾杯を求めるかのように差し出す俺。

「ああその飲み会だ。新任の美人局長の歓迎会だよ二次会だけどね」

俺はマイクの出向元の機関の話は聞いていた。

直接の配属先の新人事についても。

そんなわけで俺は部外者の身でありながら。大手コングマリッドであるLXXコーポレーション、通称リーイクスイクスの連中と顔をあわせることとなった。



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