結末 → 再起動 (SF小説 ノイズ)


結果的にあの時、俺たちは失った。

傭兵としての俺たちが出来すぎたからである。

こうしてその事について、流暢に分析を巡らしたりしてる事を思えば、むしろ拾ったと述べるべきか。

何れにしても俺たちは、あの地獄のような正規兵どもによる掃討劇から生き延びて帰る場所を失うことになった。

アイツ等は余計なことまで暴き出してしまった出来過ぎの俺たちが邪魔になっていたのである。


そもそもこんな時代であるからか、物騒な傭兵団などは用もなく、ましてや精悍な面立ちをしていたはずの俺も、こんな平凡なヒューマンの顔に成り下がり、襟を正して見る必要もないモニタなどとにらめっこをする羽目になってるからだ。


いや別にボスであるドクターに不満があるわけじゃない。

ボスは個人的に存在さえ再び抹消されたこの俺をまた救ってくれたのだ。


長年馴染んだ仕込まれた機械のボディを脱ぎ捨てることによって、シチズンと生まれ変わった俺は、新たなる戦場を与えられたのだから、白煙と焦燥とした空気に支配されていた戦場の代わりに、ドロドロとした思惑と駆け引きが絡み合うドンパチ無き戦場を。



「何をサボっているんだエージェントT!確かな不正事実のデータを拾えなければ、我が社の利益も貴様の仕事もハイドしたままなんだからな」

冷徹で性急で横柄なボスの叱咤が響く。

俺の流体核に刻まれたノイズの持ち主だった男の名を借りて、俺は存在を再起動した。

LXX(リーイクスイクス)のアフターサービス班、別名”掃除部隊”の一員トロイとして。



シチズンとして帝国市民権を得た俺は、見かけはノーマルヒューマンとして存在し、サイバノイドとしての面影はすっかりと身を細めている。

感知力の20%を占めていた偏光性レンズの収まった粋な頭部もなく、各種の火器が備わった重厚なボディも換装されている。

バイオロイドとしての本質は変わらないが、迫撃用の戦闘力などあのベイグスの奴ら並みに落ちている。

その代わりデータの収集と分析は、帝国データバンクとフルシンクロしてる相棒を持つアイツと同等だ。

会社のメインは勿論その帝国データバンクにハッキングさえ可能なうちのボスとリンクしてるからだ。

見かけと自前の装備は貧相な俺だが、自社製の目と耳そしてその記憶に瞬時にアクセス可能な俺はアイツを超えているのかもしれない。

まあそんなことは、アイツは気にもしないだろが…。





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