至宝の探索 11 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)


…ごめんなさい

不意に弾き出されたシャーラトンは、そんな思いを感じた気がした。


自らが浮かび軽くなる感覚の中、彼は必死に状況を捉えようとする。

周りと言えば大小の限りない力の奔流だけが感じられ、自らの存在がそれに流されそうな恐怖にさらされる。

未体験の感覚の中とにかく落ち着こうと考え、先ずは自身の状態を確認するシャーラトン。

思考と記憶、その二つは変わりがないようだった。

ただし肉体的な実感が伴わない。


あるはずの手は握り締めることさえも叶わず、踏みしめるべき地面がわからない。

わからないとゆうより脚の感覚もない。


…俺は死んでしまったのだろうか?

そんな思いに囚われるシャーラトン。


「死んだわけじゃないさ」

不安に押しつぶされそうなシャーラトンに声がかかる。


「単なる離脱じゃよ」


「その声は…お頭…、やっぱり俺は死んだのか?お頭の声が聞こえるなんて…」

忘れるはずのない声が聞こえた気がしたシャーラトンは思わず声を上げる。

「ひどいなあそんな風に思っていたのか君は、今の頭は僕だろ?シャーラトン君」

二つの眩い大きな力の塊が近づき、その内の一つがそんな言葉をはきだした。


「それよりも、何か云うことがあったんじゃないのか?僕に…」

ようやく目の前の存在がブラーであると理解したシャーラトンは、わけがわからないながらも気を取り直しハッズよりの言伝を報告する。

「ハッズよりの言伝を伝えます。例の男は、そのままアルヘムにと舞い戻りフードを被った雇い主とともに宿に引きこもった模様です。引き続き動きが有るまで監視を続けるとのこと…、あと…」

「あと?」

「内話が通じず、報告が遅れたことを謝罪しておりました」

「ああ、そうか」

そんなブラーと思われる返事にシャーラトンは、一瞬だけ手を打つ仕草が見えたかのように思えた。

「真霊でもなく、つながりのないハッズは上界への連絡手段がないからか」


「では、これからはこの小僧にさせればいいじゃろう、小僧も真霊もちになったからな」


「…エイブ様なのですか?もしかして…」

そんな呼び方をする人物に思いあたったシャーラトンが、もうひとつの輝く塊に向かい問いかける。


「そうじゃ久しぶりじゃな、シャーラトン。そうは言ってもわしはいつもブラーと共にあるのじゃがな」


しばしの沈黙のあと、シャーラトンは思い切って問いかけた。

「えっと、お頭でもエイブ様でも構わないのですがこの状況とかを説明してもらえると助かるんですが…」

「ん?君からハッズよりの報告を受けたところだけど、自分のしたことがわからないのか君は?」


「そうじゃなくって、この場所とか俺がどうなっちまったかとかです、お頭」

その答えにまちがいなく目の前の存在が頭だと確信したシャーラトンがため息をつきながらもう一度問いただす。


「ここなら、上界じゃ。物質で満ち溢れる小僧の住んでいる下位界ではなく真霊や霊の世界じゃ。ちなみにお主は心霊に肉体を弾かれて霊となり此処に存在している」


「肉体を弾かれってことは、やっぱり…」

「死んではおらん、目を凝らし…感覚を集中し自身を見つめるが良い。細長くつながった筋が見えるじゃろ?主がまだ生きておる証拠じゃ」

言われたとおりシャーラトンが自らを認識すると、一筋の光の筋のようなものが何処かへと長々と続いている。

「見えたか?小僧。その先を辿れば主の身体に繋がっておるのがわかるじゃろう」


その光の筋は、随分と長く遠くに続いているようであったが、何故かたどってゆくことができた。

それが繋がっているせいかなんなのかはシャーラトンには知る由もなかったのだが。

その続いてる先には見覚えのある部屋があり確かに彼の身体にと続いている。


若干、記憶にある彼自身とは姿が異なっているようにも見受けられたのだったけれど。




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