至宝の探索 5 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)


先程までの記憶の激流から立ち直ったブラーは、馬車に揺られながら目の前の男を伺った。

勿論表面上はそんなことは描かず、このおそらく借りつけたものであろう馬車の車窓を眺める姿勢で。


その姿勢を変えることなくエイブの眼を通し、向かいに座る男の内面を見開いてゆく。

最初にノウムよりの使いと目の前が名乗ったとおりそれは真実を示し、刻まれた記憶も今回の依頼とは遠く、ブラー自身を確認するためだけの詳細だけが浮かび上がる。

男の素性や経歴などは今のところブラー的にもエイブの霊視をもっても特に問題になる事実もなく、一先ずあきらかにしたそれらをいつものように無限なるエイブの記憶の一部として放り込むことにした。


「行き先はどの辺りでしょうか?」

退屈さを覚えた顔に書きかえ、答え合わせをするようにブラーが男に問いかける。

「くにざかいを越えた先の都市アルヘムだ。そこでブラー殿は依頼主にあたる方に会って頂く」

淀みなく簡素に返された答えからは、彼の内なる記憶の刻印以上のものは引き出せなかった。

この男の素性上、仕事での私的な思案や勘繰りなどは引き出せるとは思えなく、そしてその答えの先も何れわかるだろうと考えたブラーは、その答えに一度だけ頷き車窓を眺めなおす。

自らの記憶の中から向かいの男の素性の知識や行き先の情勢や情報を並べ上げ思案にくれるブラー。

ただし、その顔つきには何気なく外の景色を目で追うばかりの表情を普段のように貼り付けることは忘れないでいた。




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