何か (擬似恋愛小説)

4 (擬似恋愛小説   何か)

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どうしてそうしてしまったのか、どんな思いだったのかは、今ははっきりとは思い出せない。

それほど疑問だったのだろう、それほど意味がわからなかったのだろう、彼と彼の言葉の事が。

勢いだったのかもしれない、他に理由があったのかもしれない。

とにかく私は、その書かれていた番号を押し始めていた。


何度目かの呼び出し音のあと、聞き覚えのない声と聞き覚えのない名前が返事された。

「…えっと…」

その覚えのなさに冷静さを取り戻した私は言いよどんでしまう。

「…あっ、僕です。カズヤです」

その声は慌てたように彼の名を名乗った。

「すっすいません、…ほんとに連絡くれるとは思わなかったから…。だからつい、いつもの調子で名乗っちゃって、あっ…そんなことより今晩はですよね、はじめましても言わないと…」

そんな彼の慌てた様子に、私は少しだけおかしく思えてしまっていた。

「ふふっ…、はじめまして今晩は、カズヤさん」

「えっ?…何かボク変ですか?おかしいなこと言いましたか?」

相変わらずの慌てた調子で彼が聞き返す。

その慌てぶりは、あの横柄で自分勝手な呟きや言葉を綴る人物とは思えないほどだった。

「ううん、ふふっ、別に大丈夫ですよ。ただ…思っていた感じと少しだけ違ったから…」

まだ少しばかり笑いが収まらなかったがなんとかそれだけ答えることができた。

「ああーっ、良かった、少し口調がへんだったから何か失礼なことを言っちゃったのかと思いましたよ」

ほっとしたような彼の言葉。

「それにしても…、わざわざ電話をもらえたことは驚きで、そのう…とにかく感謝してます。それに…思ってたみたいに優しそうな感じの声、とても素敵です」

割とまともな受け答え。

最後の方だけ何か彼らしかったけれど。


それが最初の彼とのおしゃべりだった。



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