3 (擬似恋愛小説   何か)


「無関心とは憎まれるより辛いことだよ」

そんな言葉が思い出される。


昔、付き合っていたはずの人がもらした言葉だった。


問いかけへの答えが怖くて、その答えがとても怖くて…。


肉体関係を何度か持ってしまったあとの彼の振る舞いが、何故かそれ以前より遠くに感じてしまったことが怖くて…。


私はついぞそのことについて、問いただせなかった。

メールの返事がないことや、呼び出しばかりの携帯の返事について。

嫉妬を示せばよかったのだろうか、取り乱す姿を見せればよかったのだろうか。

余りにも大人びた優しげな態度を失いたくて、私には問いかけなどできなかった。


先程の別れ言葉になってしまった言葉にも、返事さえできなかった。

そして殊更に深い関係となったことを戸惑っていたのかもしれない。


そんな経験は僅かでも私の役にたっているのだろうか?。

一時はそんな男の身勝手さと放漫さに疲れ果ててしまっていたとゆうのに。


恋とは何なのだろう、愛情とはなんなのだろう。

幼き日より疑問に思いながらも、それでも周りを真似るように過ごしてきた。

好意に対する興味を恋と思い、そんな自分の心を愛情と思い込み、月並みな恋愛をいくつも演じ続けた頃。

そんなものは、やはり長続きなどしなかったのだけれど。

そしてそれは実ることもなく、傷を増やすだけの孤独な日々を情けなくも受け入れてしまう自分を、時には見つめてしまうことも。


そんな私に彼は、この彼は断言するようにメールのやり取りの中で語ったのだ。

「結婚とかは成り行きであって、互いのその場の利益にしか過ぎないものだ。それも一部にしか過ぎないわけで、残りの大部分を満たすために恋をしなきゃ。そう、このボクと恋をしようよ」と。


口説き文句ととらわれがちなその言葉の綴りを私は何度か読み返してしまった。

それまでのたわいのないやりとりから外れたそれを。


暫らく返事を返せなかった私は、一時間ほど沈黙を続け、長い戸惑いの果て短くメールをしたためた。


「なぜ?」

と一言だけ。


一拍後に、私にとっては凍りついてしまったように無限に感じた一拍の後に返事は帰ってきた。

「そんなのは、君が好きだから。好きな人と恋をしたいから」

思いがけない返事に先程とは違い直様に指は動いた。

「えっ?理由は?それに何故そんなに自意識過剰で強気なの?」

今思い返せば、失礼な言葉だったかもしれない。

とにかく湧き上がったものを私は言葉にして送り返す。

「君を好きだと云う理由なら、そうとしか言えないからそう言ったわけで…。自信過剰に見えるのは嫌われてないんだなって思ったから。無関心ならそんな返事を返さないでしょ?普通…。それから…」


答えは唐突に切れていた。


彼の考えがよくわからなかった。

言葉の綴りでは私にはわからなかったのだ。


まるで続きを望んでるかのように沈黙を続ける私に、彼からの続きが送られてきた。

「それに、文字だけじゃ伝わらないのは、ボクがよく感じてしまうことだから。もし…もし…君がよければ、この番号に電話をして欲しい。今ならボクも大丈夫だから」

その言葉の後には、携帯番号であろうかと思われる数列が記載されていた。


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