真昼の月と夜の海

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月は夜でこそ輝くのにそれまでのボクは、周りの明るさに戸惑うばかりで色も影も薄い真昼の月でしかなかった。

モノクロームの道、そんな色あせたような朝の道をボクは歩いてゆく。

けれど色あせてるのはきっと周りじゃなくってボクの心の方だと思う。


学校と云う名の乾いたその場所に、今朝も紛れるようにボクは溶け込んでゆく。

色づいて目立っている周りのクラスメイトの中、挨拶はおろか言葉のやりとりさえもボクには無関係だ。

いじめとか無視されてるわけじゃない。

それはそれで暗い影のような色に覆われている。

そんな何処にでもある暗い色や多くの明るい色とは無縁のボクは、教室の中、まるで背景画のように周りに同化している存在だ。


苛められてるならましだ。

その存在を憎まれているからだ。


無視されているならまだましだ。

其処にある存在を否定されているからだ。


その対象にもなれず、存在すら認められていないような空気に近いボクみたいなものはどうすればいいのだろう。

何処までも青い空や自由気ままに過ごす雲立ちの中で場違いのような薄く異なったもの。

そんな真昼の月、そんな誰にも気づかれないような月は、ただただ、夜が来るのを待つしかなかったんだ。


「えーっ、みんな席につくように」

先生の声がクラスに響く。

何処にでもいる目立つ存在、そんな太陽みたいな奴らがおどけたように大声で返事を返しバタバタと席についてゆく。

生真面目を絵に書いたような連中が、その様子に顔をしかめる。

そのどちらでもないボクは、片隅に忘れ去られた余った机のようにただぼんやりと今朝もあるだけだった。


「急な話ではあるが、このクラスに転校生がくることになった、入りたまえ…影山君だ」

そう言った先生は廊下でまたしていた人物を招き入れた。


放漫な態度、見下すかのような目つきのその人物は、ゆっくりと教室を隅々まで眺めまわし背を向ける。

白いチョークを使い黒板に描かれた文字は、大きく影山海斗と書かれていた。


クラスの中がざわめきだす。

特に容姿などこれといったものはないのだが、とにかく纏っている雰囲気みたいなものが目立つ感じだからだった。


明らかに大人びた容姿のその人物は、それに似合った低い声で、自己紹介を述べだした。

「俺は、影山海斗。訳あって長く学校から離れていたけど、今日から世話になる。その訳ありのおかげで、君らより年上の二十歳になるけど、そんなことは気にしなくていいから」


その言葉にどよめきが起こる。

ざわめきの方も一段と増してきたみたいだ。


「…と、取り敢えず席を決めようか、どの辺に…」

「先生、席ならあそこの隣が空いてるじゃないですか、俺あそこにしますよ」

何か緊張気味の先生の声を遮って彼は、指をさした。


いつもは注目されることなど決してないボクの方を見つめながら。



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気になる始まりですね。
タイトルも素敵です(^o^)
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