出立 (ファンタジー小説 世界 20)


正宮本殿の扉の前で二人は、歩みを止められることとなった。

「ブラブリアどの如何なつもりですか?」

本殿の扉を塞ぐ形で二人を取り囲んだ者たちが問いかける。

彼らの顔には荒事も辞さぬような決意が浮かんでいた。

それでも言葉だけで引きとめようとするあたりは、英雄の武の成せるものなのか聖主の身を案じてのことなのか。

「あの愚か者は後先など考えておらぬ様子。ここはわたくしの言葉にて思いとどまるように申し渡すつもりです。此処と皆様方のこの先の安らかなる静寂のために」

主には何かしらの考えがあるのだろうか?それとも単なる気まぐれか、何れにせよ指示なきまでは何もと思い大人しくブラブリアは主であるペリッシュがこの茶番を終える間、静観を続けることとした。

「その愚かさ故、聖主様に何をしでかすか心配なのです。あの者は無理難題で配下の輩たちを愚弄すると聞いております。そのような…」

ブラブリアに少しだけ目線を向け話は続く。

「ですからこそ、わたくしが出向くのです。将軍様にお聞きしました、このままでは害をなすと、此処と皆様方に害をなすと。かのものは残忍で容赦などないと」

それを聞いたものたちの顔は、明らかに青ざめていった。

持っていたはずの自分たちの優位性、ペリッシュからの利と自分たちの保身を測り比べること、支配の薄まった彼らの身勝手な思惑が顔色の変化によって垣間見えるようだった。

「心配には及びません。わたくしの身柄なら此処におられる将軍様が守ってくださるからです、この場はわたくしからの吉報をお待ちくださるよう…」

ペリッシュの言葉に答えるかのようにブラブリアの威圧が増す。

その見えない圧力で囲みを解いたブラブリアはペリッシュを伴い本殿より外へと抜けた。


「将軍様ご無事で」

すぐさま従者とおぼしき者たちが二人に声をかける。

「馬車を」

それだけ命じたブラブリアの目の前に用意されていた馬車が引かれてくる。

労わるように少女を伴ってブラブリアがなかに消えると、逃げるように一行は本殿を後にした。

揺れる馬車の中、静かに命を待つブラブリア。

白く輝く正宮本殿の姿が背後から消え去ったあと、ペリッシュは思いついたかのように言葉を発した。

「先ずはそうですね、館に案内してください」

将軍は迷わずにそれが自らの領地であると確信し、一礼をし御者と追従するものたちに行き先を告げることとした。





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