英雄の敗北 (ファンタジー小説 世界 18)


「英雄と呼ばれた貴方様にしては、諦めがよろしいのですね」

穏やかな慈悲を伴う微笑みで少女が問いかける。

「レトア様、先代の賢王さまが昔、まだ血気盛んな若造に過ぎなかった某によく申されました。如何なる戦でも味方を勝利に導くのが英雄の証であると、武で勝てぬなら戦わず、負けて滅ぶことがないように務めることこそが英雄と云うものだと」

目を閉じ考えぶかげに答えるブラブリア。

「随分と弱気なことなのですね」

少女が返す。

「国も民も敗れ滅んでしまえばそれで終わりで、従属に甘んじ生き延びることはある意味勝利ともいえるのだ、我が主は、開国より守りしものに末永く仕えるため滅ぶことなく英雄であれと申されました」

「なるほど、そう云う理由なのですね。武人とは面白い考えの方々ばかりです」

少女の言葉と顔からは、あいも変わらず慈悲以外のものなど微塵も感じ取れなかった。


「そうは申しましたが聖女どの、正直に申せば、貴女の力は余りにも強すぎる異質すぎる。仮に従属に甘んじ生き延びることが民にとって国とって果たして良い道なのか、情けなくもありますが未だに某には迷うところです」

言葉とは裏腹にブラブリアの顔には、負け戦をなんとか打開しようとする不屈ともいえる決意が現れていた。

「そんなに力まなくとも良いのですよ将軍様。今更わたくしに何かをしようとすることも危惧を抱くことも無駄なことです。だいいいちわたくしがこの国を民を滅ぼすことなどありえません。わたくしこそが守られしもの。この国は開国より私の国なのですから」

少女の言葉は無敗と呼ばれた目の前の英雄をあっさりと貫き打倒したのであった。




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