残念なこ (小説 イケメン彼女  1)


ボクの彼女はとても男気があって、おまけにイケメンだ。

…ボクよりも。

小柄なボクと比べ身長は175センチ強、肩幅も広くほどよく筋肉がついた引き締まったスタイル。

大きな瞳は三白眼だけど、笑えばとってもナイスガイ。

ただ…。


少しだけ…。



「お早うございます」

いつものように大学までの電車を途中下車。

降りた駅から近くの住宅街の中の一軒のチャイムを押して挨拶をかける。

「はーい、あら、お早う武蔵君、毎朝大変ね。もういっそのこと此処から通ってくれても構わないわよ」

とびきりの美人が、笑顔と返事をおくりかえす。

美人は彼女の母親。

そう、ここは彼女の家だ。


ある事情で、付き合い始めて暫くしてからボクは、甲斐甲斐しくも毎朝のように彼女を迎えに来ている。

玄関に誰かが現れた。

「あっ、武蔵君…」

「お早うございます。…今朝は遅いんですね。…まさか?…昨夜は」

いつになく眠そうな顔で出てきた彼女の父親に、嫌な予感がしたボクは不審げな顔で問いただす。

「いやっ、私は悪くない、ことみが勝手に…。あっ時間だ…じゃ、これで」

「アナタ、いってらっしゃーい」

逃げるように去っていった後ろ姿に、とびきりの見送りの声が送られる。

ため息をついてそれこそ時間を気にしはじめたボクに、慰めるかのように美人が優しく謝罪を告げた。

「ごめんなさいね、なんか二人共昨夜は遅くまで起きてたみたいで、一応ことみも三十分くらい前には起きてきたけど…」


そうだった。朝の時点で気づくべきだったのだ。

遺伝的に朝が弱い彼女のために、モーニングコールも入れてるボクだったが、今朝はいつもより反応が鈍かった。

今更ながら仕方ないけど、起き出してるならなんとかなる。

時間いっぱいだけど引きずってでも研究室に連れてゆけばいいのだ。

「もう、ことみ~。早くしないと武蔵君がまってるわよ~」

その声に反応したのか、ただ単に覚醒が進んだのか、のそっとした気配が玄関に現れる。

「ほら、早くしなさいね。武蔵君が待ちわびてるわ」

「あ゛ー」

表記すらできない奇妙な返事で現れたのは、髪はぼさぼさでやたら背が高く、虚ろな三白眼を眠たげにしかめた彼女だった。

どう見ても二日酔いか徹夜明けのオヤジにしか見えなかったけど。

ふらふらとした足取りの彼女を、有無も言わさず引っ張り始めたボクは、挨拶もそこそこに会釈だけ残し駅へと向かう。

「頼むわねー、ことみのこと」

その声に反応したのか彼女が何かを言い始めた。

「あ゛~~、忘れてた…。ゆりこのとこに送信しないと…」

「遅刻しそうなんだから早く行かないと」

そう言ってボクは定期を二人分改札で示し、ホームへと重い荷物を引きずったまま飛び込んでゆく。

ブツブツと呟く彼女を引きずるようにして、走り出す寸前の電車にボクたちは、なんとか駆け込むことができた。


「ことみさん、原稿ならいつものポメラでしょ?別に自宅のパソコンでなくっても携帯で読み取って送ればいいじゃないですか」

普段の付き合いから、文章の入力はオンゲーに特化してるパソコンじゃないことを知っていたボクは、揺れる電車の中でそう告げた。

ガサガサとバッグやポケットをあさってから彼女が無表情にもらす。

「携帯…忘れた…。戻らないと、ゆりこの奴うるさいから」


項垂れてため息をついたボクは、肝心なことを聞いてみる。

「ポメラはもってるんでしょ?」

「それは…あった…」

「なら、研究室から送ればいいでしょ、そのくらいの時間ならありそうだから」

「あ゛ー…」

またもや意味不明な返事を返す彼女に、やっぱり少しばかり残念だよなとボクはまた、ため息をつくしかなかったのだけど。








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2 Comments

椿  

NoTitle

ことみちゃん、いいキャラですね(^o^)
二人がどんな風に付き合いだしたのか、どんな付き合いなのかかなり気になります。

2015/02/10 (Tue) 00:14 | EDIT | REPLY |   

フラメント  

椿さん今晩は

> ことみちゃん、いいキャラですね(^o^)
> 二人がどんな風に付き合いだしたのか、どんな付き合いなのかかなり気になります。


思いついた最初は

娘のように セクマイの女性が 性について 恋愛について

悩む 恋愛小説のつもりだったのですが

周りのキャラ

いくつかのエピ

を 思いつくうちに

何故か コメディにと…


シリアス設定な 奴も 気が向けば 書くつもりで

お話の中での 小説も いずれは…


2015/02/12 (Thu) 00:29 | EDIT | REPLY |   

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