世界

世界の真実  (ファンタジー小説 世界 2)

 ←_ →その後の朝に

昨日の朝、その朝までは変わらないはずだった。

おぼろげな遠い記憶の中では、五六歳の頃は父さんと色々な国の色々な場所に行ったことがあったみたいだけど、気が付けば父さんと二人この辺境にあたる村で、花を届ける仕事を繰り返していた。

村長さんの家や他の人の家、祭りの時の村の集会場など、季節ごとに色々な花をそれぞれ届ける。

年に二度だけ村のはずれの聖宮まで届ける仕事があり、昨日はそれを届けて終わりのはずだったなのに。

そう、…聖宮と呼ばれる何度見ても馴染めない感じの建物の前に、昨日は見かけない人影が見えたんだ。

それから…、記憶が途切れて。

気が付くと、牢屋の中だった。

そして、この場所が何故だか見覚えのある感じがしていた。

「やあ、見たところ君は、姿なき暗殺者アブソンスの隠れ蓑のクルア君だね。アブソンスが亡くなったのなら隠蔽の祝福は、あの少女が受け継ぐんだろうね、私じゃなかったから」

「ああ、君は何も知らないのか…。実を言えば君が来ることは、私の祝福である全知全明のマドによって知らされたものなんだけど」

不意にかけられた言葉にボクは身構えた。

誰もいなかったはずの牢屋の中から、声をかけられたのだから。

「だ、誰ですか?何処にいるのですか?それにアブソルは確かに父さんの名前で、父さんが亡くなったって本当のことですか」

先程の語られた内容は良くわからなかったけど、声の持ち主が何かを知っているようだと僕は確信していた。


「こんな格好のまま申し訳ない、私はモンド。祝福持ちのマドだ」

空っぽのはずだった寝台に横たわった壮年の男の姿が現れた。

「このような無様な姿は、元王宮筆頭マド士としてプライドが許さないものだから、隠蔽のマドで姿を消していたのさ。最もアブソルのように祝福ではないので不完全なものだがね」

よく見れば男の顔はやつれ、身体を起こすこともできないようだった。

「えっと、初めましてモンドさん。父さん…父が亡くなったってのは本当ですか?」

色々と思うところはあったのだけど、一番に気がかかるそれを、僕は口にした。

記憶では、父だけが僕にとっての家族であり覚えている限りずっと共に暮らしていたはずの人であったから。





にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村




関連記事
スポンサーサイト


総もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛小説
もくじ  3kaku_s_L.png 援交記
総もくじ  3kaku_s_L.png 詩・散文
総もくじ  3kaku_s_L.png ファンタジー 魔導人形シリーズ
総もくじ  3kaku_s_L.png ファンタジー 輝石シリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 遷都物語
もくじ  3kaku_s_L.png ジェノサイダー
もくじ  3kaku_s_L.png ミンストレル
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
もくじ  3kaku_s_L.png 砂(小説)
もくじ  3kaku_s_L.png 小説 終春
もくじ  3kaku_s_L.png カウンセラー
もくじ  3kaku_s_L.png 挨拶
もくじ  3kaku_s_L.png 真夏の幻影
もくじ  3kaku_s_L.png 故郷
もくじ  3kaku_s_L.png 陽炎のように
もくじ  3kaku_s_L.png 魚人の街
もくじ  3kaku_s_L.png プチーツァ
もくじ  3kaku_s_L.png 戦乱の時代
もくじ  3kaku_s_L.png 世界
もくじ  3kaku_s_L.png イケメン彼女
もくじ  3kaku_s_L.png 原罪
もくじ  3kaku_s_L.png 転生
もくじ  3kaku_s_L.png 記憶
もくじ  3kaku_s_L.png 小説  GENZI
もくじ  3kaku_s_L.png ジゴロ
もくじ  3kaku_s_L.png 小説 エセエス
もくじ  3kaku_s_L.png 小説 思い出
もくじ  3kaku_s_L.png 詩人の愛
もくじ  3kaku_s_L.png 小説 ブロガー
もくじ  3kaku_s_L.png 好きなもの
もくじ  3kaku_s_L.png アバーブ
もくじ  3kaku_s_L.png 地上にて
もくじ  3kaku_s_L.png Dragon's woes
  • 【_】へ
  • 【その後の朝に】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【_】へ
  • 【その後の朝に】へ