「ファンタジー 魔導人形シリーズ」
冥府の守護者

引き寄せられ すれ違う 定めたち 2  

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その男は帝国の王都である冥府目指して歩き続けていた。

帝国最南端に建てられたタロース祭殿へと続く古びた石畳の街道を、くるぶしまで覆う異国風の青き装束を身に纏い一人きりで歩いてゆく。

男とは反対に国境の南に広がる広大な砂漠に向かうものなど数少なく、彼の歩みを妨げるものは冥府までの気の滅入るような距離のみであった。

「これでは埒があかぬな」

そうつぶやいて男は立ち止まる。

朝のうちにはそれでも辛うじて先を見渡せたその街道も、日が傾きはじめた今となっては、覆う木立に紛れ込み石畳とは名ばかりのそれを見失かねないほどだったからだ。

その暗がりに不穏な敵意が現れた。それは次第に数を増し遠くから男を囲み始める。

男は恐ることもなく呑気にその数を数え始めていた。

「随分と集まったようだが、一つあれあれば事足りるか…」


そして男はその顔に笑みを浮かべ、あっさりとまでに不穏な敵意を全て魅了した。


群れをなして現れたのは、この辺りに巣くう四足の毛深い獣だった。

季節に出遅れ獲物を探し求めていたのだろうか、一様に痩せこけ鋭い牙をむき出しにしてはいたが、鼻を鳴らし男を慕うように嗅ぎ回る。

目立つのを嫌ったのだろうか、男は街道を外れそれらが現れた木立の中に自らも入り、敵意から従順にと染め上げた獣達を招き入れだした。

男は擦り寄る獣のひとつにその笑顔を惜しみなく向け、おもむろに手を差しのべる。

獣の頭を撫でたその手は、その優しげな手つきを変えることなく獣の目にへと翳されることとなる。

男の顔に張り付いた笑みが凄みをます。

不意に伸ばされ突き立てられる指。

それはやすやすと獣の眼に押し入り、片方の目玉をほじくり出す。

魅入られたままの獣は、それに臆することなく目尻から絶え間なく血を流しながら大人しく擦り寄ったままであった。

男が満足げにそれを眺め、取り出した眼球を握り潰した血だらけの手のひらを広げ見つめる。

そしてそれは忽然と現れた。

まるでその血まみれの手のひらを媒介にしてこの世界に産み出たように思えるほどであった。

それは、何色にも染まらずに神々しく透きとおった玉のように見えている。

大きさは先程まで形があった獣の眼球より、少しばかり大きいものであろうか。

産まれたばかりのそれは、手のひらを汚す血糊の香りに悦ぶかのようにふるふるとまでに震えているかのようであった。

男はその邪悪とも言える神々しく透き通る玉を獣の空いた眼界に無理に押し込めると、言葉を発することなく獣の様子を伺うのであった。

透明であった玉は、流れ出る血潮を貪るかのように赤く染まりやがて奇なる魔的な輝きを帯びだした。

鈍い赤い光を灯しだしたそれは、もう片方の瞳さえをも侵食するかのように輝かせ、獣の身体そして内なる本能までも作り替えてゆくかのようであった。

獣であったそれは、一回りも大きくなり灰色から銀色にと変わったその身体の持つ新たなる牙で残りの獣を喰らいはじめ、ことを済ませ従順に男の前で頭をたれた。

男は満足げに頷いたあと、それに乗り再び遥かなる王都を目指すこととなった。それまでの歩みとは比べ物にならないほど素早い魔獣に運ばれる形で。

闇が世界に訪れた頃、小さな部落にたどり着いた男は魔獣を訪れた闇の中にと隠し宿へと向かう。

たどり着いた宿で主人に宿泊の意と予定を尋ねられると、男は短くもあっさりと語った。

「一泊の宿を願いたい、私はゴッドと云うもので王都を目指しているのだが」

と。



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