ベイルとベイル 3

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Byフラメント

いつのまにと私は思ったが、諮問での命により旅立つことになった今朝の出来事を思い出した。

「君に逃亡の意思などはないとは思うけど念の為にスキャンをかけてもいいかな?」

そう、ベイルが言ったことを。

特にその気もなく装備や持ち物もありふれていた物であった私は意義を唱えることもしなかった。

移動の為に用意したドリムである馬たちや馬車についての申し出ならばそれなりに断ったのかもしれないが。

目の前の私が私にスキャンをかけるのを感じた。

今朝までの私ならばそうしたであろう。

目の前の存在が見た目通りのものかを判断するために。

覚醒したばかりであるはずの私ならば事実を確かめたくなるはずだから。

「どうゆうこと?説明してくれるかな?」

ここにいる私自身への目の前の私からの質問だ。

自分ゆえに敬語でさえなかったが。


「私を調べて自らも調べたなら、その通りだわ。私はオリジナル、あなたは私の複製ね今朝までの私の…」

その時に私はある可能性までを思い浮かべてしまう。

「つまりグランド、あなたには私をいくつでも造れてしまうって事かしら?」

「主の危惧するようなことは儂にはするつもりがない、ある男のように主たちを囲って楽しむ趣味もないわけだ。単にさみしがり屋の老人の趣味じゃよ、話し相手を増やしたいと願うな」

「どうやら、私には自由意思があるようだし、黙って変なことをされるなんてのはありえないわ。術式を描けばそれなりの魔道も使えるようだし例えドリムであってもね」

ドリムの私は随分と冷静なようだ。

客観的にみれば私はこうなのだろう、今の私と同様内心ではどきどきしていたとしても。

「先ずは区別が必要ね、存在してしまった限り例えドリムの身であっても消されたくはないわ。ドリムであるミミ、ミリムとでも呼んでちょうだい」

我ながら主張が激しいものだ。

同じオリジナルといえども寸分も違わないだろうミリムでさえもこうなのだから、グランドとベイルでは別人なのかもしれない。

「わかったわミリム、これからよろしくね」

「こちらこそ」

「どうやら、ほんの余興のつもりじゃったが、このままミリムとして旅の道連れが増えるようになったようじゃな」

グランドの無責任な発言に、私とミリムが抗議の眼差しをむけたのは言うまでもない。

「はあ…、ギルドの命を果たすためにドリムたちを用意したと思っていましたが、あとはご自分で用意して下さいよ」

ベイルが呆れたようにグランドに向かいぼやいた。

「街につけば工房の一つもあるじゃろう、主たちが宿を決める間、用意しとけばいいのじゃな?」

老人はこともなげに応える。

そもそも高価で希少なドリムがこの先の小さな街であるのかは、疑問であったが不可能ではないのだろう。

幾つもの摩訶不思議な出来事をあっさりと行えるこの老人には。

先程までの出来事を体験していないミリムは不審な目つきで見ているばかりではあったが。





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