娼婦は何でも知っている(Rファンタジー)

銀白の髪の少女 1 (小説 娼婦は何でも知っている)

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目覚めるともう、私を慈しむ手はなく微笑みかける顔もやはりなかった。

私は独り狭い寝床で、確かにあったはずのそんな物のことをぼんやりと思い出していた。


「起きてるのかい?カメリア。だったら使いにいっとくれ」

ミーニャの声がする。

気を取り直した私は、あてがわれた小さな部屋から顔をのぞかし、その大柄で陽気な主人に挨拶をする。

「朝からなんて顔をしてるんだいこの子は。迷い猫のようなそんな顔は、冷たい水で洗い流して市場にいつものように行ってきておくれ」

それきりミーニャは奥の方へと姿を消し、私は言われた通りに部屋のある二階から降りて店を通り抜け、裏手の井戸へと向かう。

汲み上げた水を桶にと移し、夢など流すかのように顔を洗う。

冷たい水は気持ちを落ちつかせ、心を切り替えて今日と云う日に立ち向かう元気を恵んでくれた。

改めて桶を覗き込むと、そこにはもう迷子の泣き顔の少女の姿はなく、白銀の髪を誇らしげにたたえた刺すような赤い瞳の少女が見つめ返していた。

いつもの調子が戻ったところで、私は残りの水を調理場にと持ってゆくことにした。

使いの内容を聞くためにだ。

水の桶を手にしたまま店の脇の奥まった調理場を覗いてみると、そこを仕切る最年長の姉が、私の顔を見るなり早々に買ってくる物を一通りあげだした。

そうは言ってもハーフエルフである私は、彼女と同じくらい年月を重ねていたのだが。

「いいかいカメリア、ドゥースの干し肉はペドロのところで、豆は買い置きがあるからいいとして…香辛料と油はキエフの店、あと帰りに酒屋のガウスに店に寄るよう言っとくれ。そしてその水はここに足しとけばいいから」

調理場の責任者であるリリウムが最後に大きな樽を指し示し、そう私に告げる。

最初は幾つもの注文を覚えきれず、手に書きとめたりしたもだったが、最近は一通りのことを覚え、この、もと華であるリリウムを呆れさせることもなくなった。

「ペドロの店とキエフのところ、あとはガウスですね、では、行ってきます」

「ああ、頼んだよカメリア」

彼女の言葉に頷き買い出し用の大きな籠を背負った私は、忙しげな彼女に挨拶をし元気な足取りで再び井戸がある店の裏口へと出てゆくことになった。




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