新たなる争い 8 (小説 輝石物語)

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Byフラメント

一行は案内の者に手招かれ、謁見の広間にとはいる。

重臣たちが立ち並ぶ間を通り一段高い壇上の前まで招かれた。

「なんだ?こいつらは…」

小さな失笑が脇の方から漏れ聞こえる。しかしそれは、突然鳴り響いたファンファーレによってかき消された。

少女とアサシンがひれ伏す中、狂戦士ただひとりだけが先ほどの失笑の相手を睨みつけていた。

「これカーロン、主も跪け」少女が戦士に囁く。

「構いませぬよ、魔女様」

重厚な調べが消えたあと、忽然と壇上の席に鎮座した者の声が響いた。

「では、お言葉に甘えて」

一斉に頭を下げた人々の中一行だけが、壇上を見つめる形となった。

「彼が、我が王国の礎となった伝説の勇者なのですね」

「まあ、伝説ではそうなのですが、勇者と云うよりは…、それに無骨な者でありまして…」


「無骨?時代錯誤の無礼者だろ…」

またもや、野次の如き言葉が漏れる。

「カル!よすのじゃ!御前じゃぞ」

先ほどと同じ声に今にも飛びかかろうとした戦士を紫の壁が阻んだ。

「見ての通りの短気者で」すまなそうな少女の声。

「ルナン壁を消せ!陰口ばかりの臆病者に、ちょいとばかりお仕置きをと思っただけだ」

壁に阻まれ身動きのとれない戦士が吠える。

「ソレルも口を慎みなさい、後ほど勇者どのと手合わせの場を設けますから」

「はい、有り難きお言葉です陛下、わたくしめも少々身体がなまっておりまして」

一人の男が今度は丁重に一歩前に出て挨拶をした。

「生意気な奴だ、俺様も数百年ぶりのことだから加減なんぞできねえからよ、それでも構わねえかい女王さん」

「構いませぬ勇者よ、それにもしもの時は魔女様、立ち会っていただけますよね」

「陛下のお頼みなら無論のこと、カル、そうは言っても手加減はするのじゃぞ、普通は首を飛ばせば生えてこぬものじゃからな」

「人間相手にそこまではやらないぜ、腕の一本もおとせば身の程も知るだろうよ。だいいち腕くらいならてめえの術ですぐくっつくだろうし」

今度は男のほうが一歩踏み出そうとした。

「ソレル!それに勇者どのも続きは闘技場にてですよ、正々堂々と手合わせを願います」

男は渋々と礼をし、戦士はもったいぶって慇懃に頭を下げた。



「なかなかのところじゃねえか」カーロンが珍しく素直に声を上げた。

宮廷近くのその施設は闘技場と呼ばれるだけあって、格好な広さと周りをぐるりと囲む高い壁があり、その楕円状の広場を挟み込むように向かい合ったひな壇まで設けられていた。

向かい合ったひな壇の脇には、長剣を大地につきさした格好の巨大な戦士の彫像がそれぞれに飾られている。

「いい見世物だよなあ、こいつは」人ごとのようなカーロンの言葉。

「そうじゃな、王国中の者共に、主の名と強さを見せつけてやるが良い」無責任にも聞こえる少女の声。

「とばっちりが行かねえように女王さんはせいぜい高みに居るように言っときな」

枢機卿と女王が座する向かいのひな壇を眺めカーロンがにやりと笑う。

「ここにおる、わしの庇護で十分じゃろ」

「まあそうだな、この厚みと高さなら少々意気込んでもいいだろ?」

「そうじゃな、勢い余っても四肢ぐらいにの、頭は面倒じゃから」

他人が聞けば驚くような言葉を、さらりと少女が述べた。

「では、それがしはこちらで魔女殿と高見の見物を」

「好きにするがいいさノーマン、どうせあっとゆう間に終わっちまうからな」

「そう言わず少しは楽しませてくれ」

「全員のしちまったら、てめえとの決着をなんならつけてもいいぜ俺は」

「それは、ダメじゃ…今は」

真面目な顔つきに変わった少女。

「ああ、わかったわかった、じゃあな」

退屈そうに肩をすくめた戦士は、中央に降り立つ通路にと向かっていった。




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