月の魚 3 (小説 全知全能の使役師 バンズ)

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Byフラメント

「昔、娘をかけて賭けをしたことがあってな」

バンズが話す。

何の話だろう それにマスターには娘などいないのに…いつのまに

とヘキサは思った。

「娘のフィーネをくれてやると、海原の女王に言われてな。月の魚の伝説の真偽についてなのだが」

「海原の女王と言いますと、七大精霊のひとりシレーニ様のことですか?」

「むろんそうに決まっておる。あやつが言うには、『伝説のように満月の晩に月明かりに照らされた波間に月の魚が現れ、それを釣り上げたものの願いが叶うのは本当だ』と言いだしたのだ」

「さらに『なぜならばそんなことが出来るものが現れたなら、私が願いを叶えだろう』と言いきったものだから、ならば賭けをしようと申し出たのだ」

「わしが『かつてそんな魚を釣った者の話を聞いたこともなく願いを叶えると云う言葉も疑わしい、真偽の程を賭けでもしてみるか?』と解いたところ、『この言葉が嘘でないことに、自分の娘をかける』と言ったのでわしもつい、『ならば、兄弟でもある大地の精霊王ベアルドナルドラをわしは賭ける』と言ったのだがな」

ヘキサは目を丸くして驚いた。

「いくら、お優しいベアードさまとは言え、勝手にそんなことをされては」

「なに、ベアードには後で話をしたのだよ、『いくら娘のようだとはいえ、長年わしに使えてきた娘同然のお前をくれてやる訳には、いかなかったのでな』と」

「兄弟は笑って納得してくれたよ、『それならば』と」

「『ただし、今の使える身から解放されてからの話で良ければ』と付け足されたがな」


ヘキサは返事もできなかった。

身勝手なあるじに。

それ以上にのんきな精霊王に。


そして主がもらした自分へのことに。


「それで今夜、試してみることにしたのだ、こうして」

そう言ってバンズが頭上を指す。

先程の湧き上がる思いを振り払って見上げたそこには、信じられない光景が広がっていた。

丁度、頭の上に水面があるようにそこには、真っ暗にひろがる天空の蒼い輝きにに向かって釣り糸を垂らすあるじが逆さまに写っていたのだった。

それを驚いた顔で見上げてる自分の姿までも。


「月とは追いかけても逃げてしまうものだ、ならば月から真下に糸を垂らせば魚が釣れると思い、こうして此処にいる」

「偽りのないように女王が言うには、最も大きな満月の晩、その真下に照らされる海でないと月の魚は釣れないそうだ。しかも特別なこの竿を用いてな、つまり最初からそんなことのできるものはいなかったと云う事だ」

此処は 月なんだ…

ヘキサは改めて辺りを見回す。

砂漠以外何もない世界が、暗闇の空のもと延々と続く場所

その黄ばんだ砂が音もなく舞いあがれば、すぐには収まらずいつまでも漂う場所

そんな如何にも不思議であからさまに寂し気な月と呼ばれる場所に今、自分は来ている

そう思いながらヘキサは、辺りを眺め回すばかりであった。



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