雨季のはじめに 13

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Byフラメント

あたかも津波のごとく押し寄せるそれは神殿さえも飲み尽くし、湿地帯であった目下に広がる光景を濁った波の悪夢へと変えてゆく。

流石にこの力に逆らうこともできず、黒い消しがたい染みであった軍勢も一つ残らず飲み込まれ驚異は去ったかのように思えた。

但し多くの犠牲を伴ってのことなのだが。

大きな堪えがたき一波が辺りを根本的に変え、その怒りの流れがようやく静まりかけた頃。

気兼ねなく気ままにのたうち回る新たなる大河は、勢いを潜め始めその流れにも静寂が戻る。

かの精霊王が、次々と築きつつある石の堤の戒めのせいだった。

雨季の初めでもあり多くの恵みを含んでいた大河を宥めるためには精霊王とて多くの力と時を費やしたのだが。

未だに水浸しの大地に降り立ったレクティスは、跡形もなく消え去った神殿の姿を目にし、がっくりと膝を落とし声も出ない有様だ。

「わしと同じく強大な力を持つ主には、昔のようにもう必要のないものじゃろう」

バンズが素っ気無く言った。

「確かに僕は前世の記憶をたどる限り、かの魔動王の生まれ変わりですが、神官見習いレクティスとしてこれまでに神殿に世話になっていたその記憶もあるのです。比べれば僅かな時の流れではありますが、それもボクなのです」

「随分と変わったものだな…」

大河を押しとどめ、皆と一緒に集まった精霊王はつぶやいた。

「何者でも何と名乗ろうが私の主人には変わりません」

レクティスを助けおこしフロウが見つめる。


「兄弟よ、もうひと仕事頼みたい新たなる土台を」

「相変わらず、人使いの荒い奴だ」

「神ではなく、ただの使役師なのでな」

精霊王が水浸しの湿原に強固な岩盤を隆起させると、バンズは真界より神殿を呼び戻す。

フロウの出現により入口は崩れ、被った流れに水浸しではあったが。

「わしの気まぐれは此処までだ。この先はお前に任す、この国は遠い過去の時より母のものだ故にお前のものだからな」

奇跡でも見たかのように声も出ないレクティスに向かって全知全能の隠者はそう言った。




再び舞い戻った天界のバンズの部屋で、ベアルドナルドラが問いかけた。

「あの、理学を用いるとゆう狂王をほっといても良いのか?」

「わしが、そやつを滅したところで何も変わらぬ。時代、人の心、移りゆく世界のようにそれは神の如き力で戻そうとその流れを押しとどめることはできぬ。幻の如き世界は、幻に任せとけば良いのだから」

バンズは手にしたマグを口に運び精霊王にそう答えた。

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Comments 2

椿  

改めて

初めから全部読み直してみました。

親しみやすい感じのレクティスがデュアル王の生まれ変わりとか、他のお話を読んで分かる意外さがありますね。

お母さん、竜だったのか……。デュアル、フロウ、バンズの家庭生活ってどんなだったのか、ちょっと気になります(^o^)

2014/08/27 (Wed) 15:47 | EDIT | REPLY |   

フラメント  

書いちゃって後悔してますwこんばんは2

> 初めから全部読み直してみました。
>
> 親しみやすい感じのレクティスがデュアル王の生まれ変わりとか、他のお話を読んで分かる意外さがありますね。
>
> お母さん、竜だったのか……。デュアル、フロウ、バンズの家庭生活ってどんなだったのか、ちょっと気になります(^o^)


いきなり書き始めてしまったのでw


前に書いていたお話が 不死身の戦士だったので

戦士ではなく 魔術師(僧侶でも良かったのですけどw)を

熱い俺様的でない 魔術師をね

結局 なんか 神的な凄い人物になってしまいましたがww


かつて世界を支配していたのは竜(それぞれ固有の特別な力を持ち人語を解し英知もあるとゆうw)で 人はその力の源である翼のとれた(とった?)竜である

とゆう伏線を思いつきまして 祖先が同じなら 子供が生まれてもおかしくはないとゆう 強引な設定ですw


翼はなくとも 先祖返りで 極希に力を持つものも現れる

そう 召喚士や 魔道士 使役士ですww


魔道士と竜の子である バンズが 全知全能に近い力を持つのは当然と

ボクだけ納得しています

精霊や妖霊(妖麗な精霊)は 純粋な霊体で 真界に 存在するもので

妖魔のような負の魔物は 実体のある 真界などに蔓延るものです

魔獣は 聖なるものと位置づけています

この辺は おいおい書き進める予定ですが

未定です

はっきりと 統計づけができてないので



とにかく 気まぐれで浮気な僕は 一つにこだわることができなくて

色々 書いちゃいますけど


今回は 自分でも乗り気な方なので 時間ある限り

小説は更新するつもりでありますから^^




ただ 残念なことに時間がないですけどねw


何度も書きますけど 長い目で ラールのように ながーい目で

どうか^^

2014/08/27 (Wed) 22:23 | EDIT | REPLY |   

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