漆黒の邪龍 DirtyDrgon

ロストファイル 2 (漆黒の邪龍 Dirtydragon)

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「何だ?これは」

特務機関の本部コロニーに帰還したブルータスは驚きの声を上げた。

各種艦艇を格納しているはずのメインドックは、立ち入り禁止の鎖が張り巡らされ中に入ることすらできない。

<誰か状況を説明してくれ!>

誰もいない通路に向かってブルータスが問いかける。

<あっ次官 お疲れ様です 助かりました次官が戻られて>

暫くたったあと、ブルータスの前に虚像が浮かび上がって話を始める。

<挨拶などはいい!状況の説明だ!それとVはどうしてる>

<もっ 申し訳ありません次官 例のモンスターが  それにVどのは シフトしてしまいまして…>

<その説明じゃわからん! 監視カメラの映像をまわせ!>

時間の目の前に、陽動艇のデッキらしき映像が新たに浮かび上がる。


<…V指令!やっ、奴が覚醒しました!うわああ…>

「いかん!全員を脱出させろ、転送だ!メインドック内部全体に最大重力場をはれ!」

「それでは、陽動艇までもが!」

「構わん…、うっ…、あとは…次官に…」

乱れた映像には、激しく揺れるブリッジ内の様子が記録されていた。

部下とVとのやりとりの数秒後、映像が途切れている。

<Vも脱出してるのだな?>

<はっ 指令室にて …遊んでおられます…>

<…わかった そっちは後回しだ!>

<まずは ドック内の様子を!>

<ムーブセンサとバイオセンサによるスキャンだ!状況次第では 最終手段を取れ!>

…やれやれ こんな時にシフトとは

一通りの支持を出したあと、悩める次官は小さく溜息をついた。



<随時 監視を怠るなよ>

それだけ言い残しブルータスはドックをあとにして、執務室や各種会議室の集約されているコロニーの照光ユニットへ向かった。

ユニットまでは直通のモノラインを使い、施設内へと入る仕組みになっている。

セキュリティ上の都合で中心部に設けられた執務室には、幾つもの隔壁とパーソナルチェックを何度も受けながらたどり着くこととなる。

「失礼します」

「…どうぞ」ブルータスの声に最後のチェックである返事が帰る。

その女性の返事に反応し、執務室の分厚い扉が開いた。

ブルータスが中に入ると、本来整然としているはずの室内は、絵本やおもちゃが散乱し、小さな人形を抱きしめたままの少女が若い女性相手に遊んでいた。

「あっ、人形のおじちゃん!」

少女が駆け寄りブルータスに抱きついてくる。

「人形のおじちゃんは、ないでしょう?ステラ、私にはブルータスと云う名がついておりますので」

笑いながら次官は、少女を抱え上げた。

「ステラ、何処にも怪我などはないですか?」

「うん、どこも痛くないよ」

「それは良かった」

元気な返事を聞いたブルータスはそっと少女を床に下ろした。

『次官 マニュアルニ従イ最優先ニ V様ノ転送ヲ行イマシタ』

先程まで少女の相手をしていた女性がブルータスに説明した。

「ああ、すまん日常の業務に戻っていいぞヴィーヌス」

「ラジャー」

ヴィーヌスと呼ばれたメイン制御コンピューターは、マテリアライズを解除して部屋から掻き消えた。


「そうだおじちゃん、ヴィムがねえ、私がオネムになったらお話できるって」

少女は思い出したかのようにブルータスに告げた。

「ああ、ありがとう、ところでステラはまだ眠くないよね」

ブルータスが念のため少女に問いただす。

「うん、ぜんぜん」元気よく答えが返った。

「…そうか、ん?」ブルータスは思いを巡らし、そして何かを閃いた。

…もしかすると

心の中でつぶやき、頭上を気にしながら思いついたことを考える。

…一番最弱ですれば 

「ちょっとびっくりするかもしれないけど…」

にっこりと微笑みを象ったブルータスはステラの手を取った。

不思議そうな顔で見つめる少女が、手を握り返す。

手首に装着された護身用のブレスから短いパルスが照射される。

倒れこむ少女。

途端にけたたましい警告音に包まれるブルータス。

『動クナ 動ケバ消去スル!』

『オマエハ 既ニロックオンサレテイル 抵抗ハ無駄ダ』

『動ケバ スグニ消去ダ Vノ異常ガ確認サレレバ ソノ時モ消去ダ』

それまで頭上に浮遊していたはずの監視システム達が、赤く点滅を繰り返しブルータスを取り囲みカメラと銃口を向け威嚇を始めた。

『反応ナシ』『脳波微弱』『機密保持ノタメ  緊急システム作動』

『只今ヨリ コロニー自爆ノカウントダウンヲ開始スル』

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」

慌てて動こうとしたブルータスのこめかみを閃光が掠める。

『今ノハ警告ダ 次ハ当テル』

『コローニー爆破マデ アト 100mnt』

ブルータスは動きを止め、救いを求めるように少女を見つめる。

『アト 80mnt』

不意に少女が身じろいだ。

「…解除だ」

少女のつぶやきに監視システムは飛散し、再びいつもどおりの浮遊を始めた。

「V!」ブルータスが駆け寄った。

「やあ次官、おはよう、できれば抱き起こしてくれないか目覚めのキスをつけて」

返事も返さずブルータスは少女を抱き起こした。


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