溢れ続けるもの

引き止める言葉など浮かばなかった。

ショックのあまり、目の前が真っ暗になった気がした。

目の前ばかりじゃなかったかもしれない。

溢れ出る涙が出尽くしたあと、抜け殻のようによろよろと服を着て部屋をでた。

何も考えられず何も感じることもできず、ぽっかりと開いた孔にでもなったみたいっだった。

帰りの電車は降り口を何度も通り過ぎ、周りからはひそひそと指を指され続けているようだった。

ぼさぼさのままの髪、化粧も落ちた腫れた顔、着ているものはしわくちゃでところどころ汚れていたからだろう。

倍以上の時間をかけて自宅にもどれば、まだ夫は出先から戻ってはいなかった。

優しい夫に要らぬ心配をかけまいと何とか気を取り直し、浴室でシャワーを浴びてみる。

熱く流れ落ちるものは身体と心の気の緩みを呼んで、出尽くしたはずの後悔を引き戻す。

怖かったのではなく、嫌だったのでもなく、単に甘えがあっただけ。

アノヒトの特別になれたと子供のようにはしゃいでしまっただけ。

そう気づくと流れ落ちる湯を浴びたまま、崩れ落ちて泣き続けるしかなかった。

後悔の涙が溢れ出るままに、ただ泣く以外何もできなかった。


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