握りしめた携帯


開いたままの携帯を、ゆみは見つめ続けている。

一度だけメールしたアノヒトのアド。

新しい世界への入り口に誘ってくれたアノヒトのアド。

もう一度会いたい。

最後までゆきたい。

堕ちるまで、堕ちてしまうまで。

もう、後戻りはできない。

でも、見つめたままで。


休日の、停滞したままの時間。仕事熱心な優しいだけの夫もいない時間。

一人慰めるばかりの週末は切なく、募る想いと求める身体を持て余してしまう日中。

ゆみは無言で携帯を見つめ続ける。

あと一押しでいってしまいそうなのに。

もどかしさばかりが募る。

アノヒトの醒めた目が。意地悪で愛おしい言葉が指が思い出される。

ため息をつき携帯を閉じ、眼を閉じる。

アノヒトを思い出し、アノヒトの言葉をかみ締め愛おしいまでの指使いを夢に見る。

ゆみはいつしかまた、確かめ始めてしまう。

アノヒトの思いに熱くなる本当のゆみを。

アノヒトをもとめ、むせび泣くように濡れはじめた本当のゆみを。

堪えきれず自らの指で慰め始めてしまうゆみ。

快楽と切なさがゆみの中で広がり始める。激しく動かせば動かすほどもどかしい想いにとらわれてしまう。

息をあげながら打ち震え、涙さえ零れそうなゆみ。

アノヒトにあいたい。

アノヒトにあいされたい。

そればかりが心に渦巻く。


ピピッピピッ

メール音に驚くゆみ。

塗れそぼる指も構わずに開いた携帯の画面には、思いがけないアノヒトからのメールが届いていた。

ゆみは背中を押されたようにそれを、こわごわと開いてみた。

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