遷都物語

新流譚  巻の四  (小説 遷都物語 外伝)

 ←新たなる争い 7 (小説 輝石物語) →目つきの悪い男
「なんのつもりだ!我を赤鶏王と知っての所業か?場合によっては許さぬぞ小娘!!」

声とともに天を覆いつくしていた炎が割れ、仁王立ちの人影が現れた。



その姿は人麻呂と同じ顔立ちではあったが、先ほどの笑みなど微塵もなく、燃え上がるままの長い髪、頬に浮かび上がった化粧のような異様な赤き文様、全身に纏った圧倒的な圧力に更に三種三様の長い尾が巻きついた姿をしていた。

一歩踏み出すごとに、あれほどの業火が恐れ退き男の激しい怒りに触れて消えて逝く。

その怒りの姿に激しさに、鈴音は本能的な恐怖に囚われたまま立ちすくむだけだった。


ゆらりと三色の尾が解け広がる。

そしてそれぞれの色合いにゆっくりと強く輝きをましてゆく。

それぞれに鮮やかに金じきに真紅に漆黒にと。


それらの輝きが交じり合い大きな力の波となり正面へと打ち出された。

その神の怒りにも似た大波が鈴音の存在をも消し流そうとする寸前、弥彦の手から生み出された異形の子鬼どもが鈴音を覆いつくす。

眼も開けられぬほどの輝きの中、交じり合った途方もない波は、鈴音のいた場所もろとも無残にも深く広く消し去ってしまった。

まるで大きな手でまるごと抉られたように。


「青竜!なんとする!」

怒れる男は今度は、弥彦に向かい合った。

男の怒りをなんなくうけとめ、弥彦は少しだけ頭をたれはっきりと応えた。

「王にとっては些細な事、稚児のイタズラに過ぎないじゃろうて。炎奇はこれでもワシの部下、大目にみてはくれまいかこのぐらいでな」

瞳を蒼く輝かせ老人は見据えたまま男に向かい合う。

「…まあ、良い。ぬしとは特に争うこともなかろう、ただしこのようなことたびたびは許さぬぞ、例え四聖獣のぬしであってもな」


炎も輝きもいつしか治まり無残に抉られた深く大きな溝の横、意識も絶え絶えの鈴音がただ横たわるばかりであった。




関連記事
スポンサーサイト


総もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛小説
もくじ  3kaku_s_L.png 援交記
総もくじ  3kaku_s_L.png 詩・散文
総もくじ  3kaku_s_L.png ファンタジー 魔導人形シリーズ
総もくじ  3kaku_s_L.png ファンタジー 輝石シリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 遷都物語
もくじ  3kaku_s_L.png ジェノサイダー
もくじ  3kaku_s_L.png ミンストレル
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
もくじ  3kaku_s_L.png 砂(小説)
もくじ  3kaku_s_L.png 小説 終春
もくじ  3kaku_s_L.png カウンセラー
もくじ  3kaku_s_L.png 挨拶
もくじ  3kaku_s_L.png 真夏の幻影
もくじ  3kaku_s_L.png 故郷
もくじ  3kaku_s_L.png 陽炎のように
もくじ  3kaku_s_L.png 魚人の街
もくじ  3kaku_s_L.png プチーツァ
もくじ  3kaku_s_L.png 戦乱の時代
もくじ  3kaku_s_L.png 世界
もくじ  3kaku_s_L.png イケメン彼女
もくじ  3kaku_s_L.png 原罪
もくじ  3kaku_s_L.png 転生
もくじ  3kaku_s_L.png 記憶
もくじ  3kaku_s_L.png 小説  GENZI
もくじ  3kaku_s_L.png ジゴロ
もくじ  3kaku_s_L.png 小説 エセエス
もくじ  3kaku_s_L.png 小説 思い出
もくじ  3kaku_s_L.png 詩人の愛
もくじ  3kaku_s_L.png 小説 ブロガー
もくじ  3kaku_s_L.png 好きなもの
もくじ  3kaku_s_L.png アバーブ
もくじ  3kaku_s_L.png 地上にて
もくじ  3kaku_s_L.png Dragon's woes
  • 【新たなる争い 7 (小説 輝石物語)】へ
  • 【目つきの悪い男】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【新たなる争い 7 (小説 輝石物語)】へ
  • 【目つきの悪い男】へ