漆黒の邪龍 DirtyDrgon

死神隊の憂鬱 Ⅰ

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中型戦闘艇の居住区は狭く、とても人が休めるような場所じゃあない。

四名一組の一室は、二段重ねのベッドが両脇に据え付けられてるだけで、ドアのロックも大概はきかない。

鍵があるだけ倉庫のほうがましなくらいだ。

ましてや傭兵部隊ときたらヒューマノイドは数少なく、馬鹿でかいベイグス(寝るときは丸まって収まりきらない)や得たいの知れないサイバノイド(こいつは強化装甲のまま寝起きしている)が多数いて、ベッドを取っ払っても二体程度しか入らない。

そもそも身体がドアを通らねえから、正面の壁などはぶち抜かれたままだ。

俺の所属する第ニ傭兵部隊(通称 死神隊)はそんなわけで、さながら廃墟のような様相だ。

特に寝る必要のない俺は、転がりまわるベイグスや武器丸出しのサイバノイドはさけ砲撃席で休むようにしている。

ここなら誰もいないし(ここで寝る奴もないが)、ドラゴンウォリアーの末裔でもある俺の30セコ程度の仮眠なら、ハイパー航行中でも取れるからだ。

もちろん激戦のあとから訪れるDダウンともなればこんな所にもいられないが、大概の戦闘終了時は医療室送りだから、絶対安静の治療再生中で似たようなものだ。

帝国の軍部なんて予算の関係かそれとも昔ながらの伝統なのか、画一的な設備に画一的なシステムでどれも同じに作られている。

もっとも元は標準であったろうこの戦闘艇も、住人?の度重なる破壊と改造で一目でそれとはわからない代物になっちまってるけど。

椅子からレバーの類まで標準のものなど一つもなく、それぞれの異なる巨体や形状に合わせてあって、とてもノーマルな奴らには扱えない。

アイツ等が動かせるとしたらサイコリモートでシンクリングしてれば、可能かもしれないが。


普段なら考える前にやらかしちまう俺が、こんなことを思うのは、今まさにそんな状況だからだ。


仲間の半分は吹っ飛ばされて、航行操舵のシーカーズが行方知らず。

奴らの針のような七本指用の複雑な操作パネルなんて、とても俺には扱えねえ。

ましてや、うすのろベイグズの鉤爪や銃口の集まりでしかないサイバノイドのデストロイの腕じゃあ、まず、お手上げだ。


ベースに何とか連絡を取って応援を要請するか、船を捨てるしかない。


とりあえず直撃を受けて不時着中の船から離れ、辺りをさぐることにする。

ミッションは継続中なのだから。


<ファング!ベーズがらの応答は まだなのが?>

うすのろの奴がハイコミュで、何か言ってきやがった。

<今やってんだよ!そっちはどうだ?>

通信機がイカレちまってるこの状況でも、落ち目とはいえ帝国軍部のハイコミュ網は健在だ。

もちろん今は、味方どおしでアクセス許可をしあってるクソ野郎どもとしか話せないのだが。


<俺の方は 前方120°の範囲は異常なし 生命反応もなしだ>

<Mノイズが多すぎて グリアにアグセスでぎねぇげど>


<自動防御システムの可能性もあるから スキャンも平行でやってみろよ>


<…z ライトは 両システムとも無反応 サーチポッドを射出したが 周囲2kalほどトラップもなしのようだ>

デストロイからも連絡だ。


<レフト側もなしだ ムウブセンサーも黙っちまってる 壊れてなきゃあな>


<通信がい路が いがれてるがもしれねぜ>

ベースに連絡が付かないほど逝かれちまったノイズ混じりの状態では、翻訳にかけられない素のうすのろの声は相変わらず耳障りだ。

<そうでない事を てめぇの兄弟たちにでも祈ってくれ>

<そりゃあ ぎりのない話だぜ ファング オレのぎょう弟なんて なんびゃぐもいたがらよ>



状況は未明で混迷、いつもどおりのサイアクって奴だ。

…クソッタレ   

誰宛ともなく、俺は吐き捨てるように呟いた。



そもそも今回の任務はウチの部隊にしては、イージーだったはずだ。

要人警護の任務なんてステイツ(State police)の間抜け野郎どもに任せとけば良かったんだ、わざわざ死神がのこのこと出るまでもなく。

退屈な任務は、何の盛り上がりもなく終了で、あとはベースに戻って帰還するばかりだったんだが。

ベースからの出掛けに7thの奴が、ブリッジの動向に気をつけてくださいとか言ってやがったから、一応気にしちゃあいたが。

航行中もメインでの操作はベイグスのうすのろに任せて、サブブリッジにずっといてモニターだけしてたのさ。

けど、任務終了後とは、まったくヤラレタぜ。

任務は終わっちまったが、攻撃を受けた以上、ミッションは継続。

俺たちに喧嘩売ったことを後悔させてやらねえとな。



<…z ファングとりあえず合流しよう ポイントL3R17で …z>

<わがっだぜ>

<了解>

俺とうすのろは、デストロイの提案に同意した。

俺の狡猾さと同様にサイバノイドであるデストロイの分析洞察能力は、仲間に一目を置かれているからだった。


戦闘用ゴーグルに映し出されたセンサの数値に注意しながら、合流地点に向かう。

暫くしてムウブセンサが反応を示したが色はグリーンで識別信号は、うすのろの奴とデストロイを示してる。

不時着のショックで投げ出された後すぐさま生存確認をして散開し、周囲の安全確認を始めて3アワ後、ようやくまともに対処できそうだ。

誰が何のために、死神に喧嘩を吹っかけてきやがったのかを。





…zu 自分にとっての戦争や紛争は 仕事にしか過ぎない 効率を上げるための度重なる機械化や生体強化は 仕事ゆえのもの そして 常に成功を収める為 有利な展開を模索し実行するだけ それが此処にいる理由だ…


ファングの気まぐれな質問に対するデストロイの回答





ポイントに何とか到着した。

デストロイの銃口がこちらを向いていたとしていても、今更は気にやしない。

奴のスキャンが終了するまでの僅かな間の事だ。

もっとも、打たれたとしても奴の火器やビーム砲の類の80%は、回避出来る装備はこっちも装着済みだ。

まさかのスペシャル攻撃は、奴でさえも容易にはしないだろう。

そうなったらどちらかの息の根が止まるまでの戦闘になっちまうから。


「よう、先生、スキャンは終わったかい?」

「…zi 完了だ 92%の確立で 目の前のお前は ファング・ザ・DD と同じ体組織と同様な精神波の形状を所有している 危険率はリミット以内だ…」

デストロイの平坦な、合成音声が響く。


「そいつはありがとよ、…一応本人のつもりだけどよ」

俺は忌々しく応えた。


再びデストロイの銃口が俺に向けられた。

微妙にずれたその狙う先は、俺の背後を狙ってるらしい。

だが、すぐさま降ろしたその様子に、俺はぼやいてみた。


「どうして、うすのろの奴は問題外なんだ?」

「…zo zo そうゆうことだ アイツの危険度は問題外 ベイグスの種族自体が 問題外だからだ…」

それが奴の笑い声だと俺はわかっていた。最近になっての話なんだが。


「ブァング、デスドロイ、ごごは遠すぎるぜ」

「飛行すればイイだろ?」

「ノーマルの装ごうじゃ飛べないのさ。羽も出ねえじ、第一重ずぎる」

「てめぇのスーツは、どうみたってノーマルじゃねえよ。六肢用に改造されてて、エグマみたいにでかいからな!」

「…zo zo そのようなものは 帝国軍部標準品とは 呼べない…」

俺たちはいつものように挨拶を交わす。

それもこの状況で、俺は挨拶を早めに打ち切り真面目な顔を取り戻しながらデストロイに進行を受け渡す。

「どうでもいいから、いつもの講釈をはじめてくれよ」

「…zi わかった…」

デストロイは話し始めた。



攻撃の直前まで、船の全てのセンサーに異常が無かった事。

その為、亜空間からの攻撃か次元砲もしくは時空越攻撃の可能性がある事。

この惑星には、そのような大規模な組織は公には存在してない事など。


つまりデータ不足で、推論ができないとゆうことらしい。

俺は、ふと思いついたことを口にしてみた。

「単なる、時限爆弾じゃないのか?ブリッジのメインスクリーンにでもセットされた」

「…zi SPR製なら 探知は難しい ブリッジ内の半分は SPR製だからな だが 証拠も動機も目的も 不鮮明だ…」

「だったら、自爆、いや狂言だったら、シーカーズの奴の」


「…zi その推論は 可能性は70% 自分でしかけたのなら 気付かないフリも出来る…」

あくまで統計的な回答だが、当たらずも遠からずだったみたいだ。


「ぞんなの理由がわがんないぜ」

「だから、それを知る為に考えてるんじゃねえか」


「…zi そうだ まずは 1stM シーカーズの 破片及び本体の回収…」

「そうだなまずは、アクション」

「よぐわがんねえげど、GOだよな」

「ああそうさ、リスタートだ」

俺たちは再び散開を始める。


今度は目的があり、行動は明確だ。

少しばかり憂鬱な気もするが、退屈よりはずっとましさ。

まずは飛び立つ事が、ドラゴンなのだから。






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~ Comment ~

こんばんは

frammento様  こんど是非、『漆黒の竜』の一話を通しで読みたいです。ファング・DDのカッコいい活躍でお話が完結するスペースオペラ―― そんな一編をね!

承知しました

前向きに善処しますw

NoTitle

あ、「漆黒の傭兵」リメイクですね。
小説サイトの方にお邪魔して読ませていただきました。

ファンタジー作品とは雰囲気が違って、こちらも良いですね。
ファング、カッコ良いです。

こちらも続き、お待ちしております!

wwwwありがとうございます

彼みたいにクールでモテモテになりたいくらいです

ボクもw
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