娼婦は何でも知っている(Rファンタジー)

ドゥースの惑乱  1 (小説 娼婦は何でも知っている)

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中庭でのひと時が日課となりつつある私がいた。

待ち人のあるなしにも関わらずただ過ごす朝の時間は、繋がれたままのドゥースのように決まりきった諦めのようなものを私にもたらす。

他の世界など知らなければ知らないで過ごすことは、約束された安息を約束し同じ繰り返しの日々以上の苦痛などもたらさないはずで、そんな自分に甘んじることで、長き長きハーフエルフとしての定めを私は家畜のように受けるばかりであった。

今朝も中庭には入り乱れた声があがり、自分好みの華を摘もうと多くの駆け引きが行われているようだ。

そんな騒ぎに交じることなくいつものように私は一人、手折った華を抱えながらそれぞれの部屋へと消えてゆく館の客を最後まで眺めていた。

静けさの戻った中庭を見渡し馴染みの思いに耽ろうかとしていたそんな私に、驚くことに声をかけるものが今朝はいた。

「あのう、貴女も華ですよねえ…」

話しかけるおずおずとした声は、若い男のものだった。


答えもせずに、訝しげに顔を傾けるだけの私に、若者が慌てて言葉を続ける。

「いつも…と言ってもボクはきたばかりなのですが…貴女が誰からの誘いも断っているから…こんなに………」


若者の風貌を眺め、言われてみれば五日ほど前に来た泊り客達の中に、こんな顔が混ざっていたことを私は思い出していた。

「こんなにって?」

館に招かれた者だと思い出した私は、訝しさの上に笑みを重ね若者を見つめ直し言葉を返す。

若者は眩しいものでも見たように、俯き黙り込んでしまっていた。


「答えてはくださらないの?」

聞こえなかったのかと思い、下から覗き込みながら私は再び問いかける。


驚き慌てながら赤い顔を背けるように若者は私に言った。

「!…こっ、こんなにも…この人は綺麗なのに…何故なのかなって……華なんかじゃないのかなって……」

私はその答えの返事の代わりに、その火照った頬に唇を寄せ、

「ありがとう…カメリアよ、私を手折ってくださる?」

と優しげに囁いてみた。




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~ Comment ~

NoTitle

この前は高飛車系ややゲス目のお客さまでしたが、今度は優しそうなお客さん……。
なんか、いろんなタイプの人が来ていいなあ。ヤバい、何かに目覚めそうだ(^_^;)

椿さん ただいまですこんばんは~3

大丈夫です 我が忠実なる下僕 白きドゥースに限って そんなことは…

あっ ネタバレに(T_T)


wwww


いちごはニガテ
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