真夏の幻影

真夏の幻影 4 (小説 天翔ける黒龍 ダークドラゴン 番外編)

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絶妙のタイミングで滑り込んだボートに、ネアが驚く様子もなく乗り込んでゆく。

隣に座った俺に、すぐさま休暇の長さを聞いてプランをあげてゆく彼女。

ふたりが乗り込んだボートは、すぐさま動き出し行き先が決まるまでのドライブとなった。


「残りのお休みはどのくらいなのファング?」

「あと、移動も含めて三日かな?」

乗り込んでからはこの調子で、こちらを向いては話しかけるばかりで、不思議にボートに何か指示を出す素振りさえなかった。

運転手などの野暮なものがいない最新のボートは、俺の記憶ではブレスやリングなど身につけた端末をかざす事で、行き先などを入力するものなのだが、彼女にはそれがない。

もちろんお飾りの手動入力のコンソールパネルにその綺麗な指が触れることもなく、考えられるとすれば外部の者が通信により支持された目的をそれぞれのボートに入れ込むことなのだが、普通のシチズンにしか見えない彼女が、そんな軍部ばりのバックアップを受けれるとも思えず、そんな推察など柄ではない俺は聞くこともしなかった。

そして彼女が提案し俺が肩をすくめるたびに、行き先を変え続けるボートは、二人の意見が重なるまで意志でもあるかのように何度も外の景色を移し替えることとなる。

もっとも自意識があるのなら、とっくに呆れ果て二人とも歩道に投げ出されそうではあったのだが。


「じゃあやっぱり、リングから出て遊ぶのは無理そうね、ファン」

「そうみたいだな」

ステラやガーディのようにお気楽に呼ばれるまでに至った俺は、本気で休暇を諦めようと考え始めていた。


「ちょっと待ってねファン、何かボートのサーバーから探してみるから」

そう言ながらも彼女は、自分の休暇での今日までの話を途切らすことなく俺に話しはじめる。


「私の職場ってね、すっごく肩凝るの。だからいつもより多めに届けを出して今回は遠くまで出かけて来たんだ」

屈託なく笑いながら続けるネア。

彼女の話すリゾートでの出来事は、今ではしがない民間勤めの俺にとって真似のしようがないほど、クレジットを使いそうなものだった。

もっとも昔のコネと数えたこともない蓄えを使えばできそうではあったが。

それも管理を丸投げした相棒であるガーディの奴の許しが欲しいのだけど。

そんな時間が取れるわけでもなく、彼女の休暇先でのエピソードがある程度収まったところで、間をつなげるためにも湧き上っていた疑問を何気なしぶつけてみることにした。

「ところでネア、さっきからボートを何もいじってないみたいだけど、キミは魔法の手でも持ってるのか?」

陳腐な笑いを求めるかのような言葉ではあったが。

ほんの一瞬だけ顔つきを僅かに変えただけで、声の調子を変えることなく返事が帰る。

「ファン、…それは口外できない決まりなの、お仕事の関係で…」

「じゃあ、お堅い勤めなんだねネアは。それにしても太っ腹なんだなキミのボスは、俺には叶いそうもない休暇だよ話をきいてると」

その時の俺は確信も証拠もなくドラゴンの気まぐれで、当てずっぽうに返したのだけだが。

珍しく沈黙をボート内に漂わせたあと

「………さっきも言ったように肩の凝るヘビーなものだから高くふんだくることにしたの、今の仕事は」

との応えを彼女はゆっくりと返してきた。

「ああ、その方がましだな。最初がつまづいちまうと俺みたいに苦労しちまうからな」

苦々しく色んなことを思い出しながら俺は吐き出す。

「ファン、貴方って苦労続きなの?」

「ああ、そうさ毎日苦労が絶えないぜ、おかげで短い休暇も更にこんなありさまで」

彼女の沈黙の意味など考えもせずに、俺は思いついたままに会話を交わす。


「サーバーにも面白そうなのはみつからなかったし………ファン、貴方ギャンブルは?」

唐突な申し出に驚きもしたが興味も沸いた。

「今までやったこともねえけど、退屈しのぎにはなるな」

とすぐさまOKをだしてみた。

「これは秘守義務でホントはまずいけど、この先にちょうど仕事の関係で行ったことのあるカジノがあるの、プライベートで遊んだこともあるから其処に行ってみようか?でもまずいから休暇のあとは忘れてね」

ようやく先の決まった俺は、ドラゴンが忘れることなんてできないのにも関わらず、無責任にうなづいてこの謎の女神の導きに従うことにした。

それが、休暇を大騒ぎにする厄災の女神とも知らずに。

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