真夏の幻影

真夏の幻影 2 (小説 天翔ける黒龍 ダークドラゴン 番外編)

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任務遂行中は気にもならなかったが、俺自身とも言える黒づくめのこの格好はどうやら此処のリングシステムとは相性が悪いらしい。

メトロのようなコロニーと違い人工照明システムよりは遥かに凶暴な生の日差しは、俺自身を焼き尽くすつもりであるかのようだ。

かつて存在していたリング部分の軌道上にあったはずの惑星の環境を再現するためのズレは、イヤーの中で最も過酷な環境を忠実に再現しているとの相棒の言葉を嫌とゆうほど感じることができる。

システムの回転が生み出す感覚の中で頭上にあると錯覚するその敵意むき出しの赤みがかった太陽を睨み、余りにも巨大なリングによる錯覚のもたらす無限に広がる周囲を眺め、俺はまたため息をもらすしかなかった。

…やれやれ こんな場所で残りの休暇をどうやって過ごせと云うんだ

と。

リングの内円中央部に設けられた主要多目的幹線道路と淵から淵へと渡る等間隔に繋がった凡庸道路のもたらす幾何学模様的な光景は、ごちゃごちゃと密集したメトロ住人の俺には一種の幻影のように見て取れる。

無論帝国の領域でもあるこの場所であっても(ここがどうやらお膝元らしいが)ブレスに内蔵されたナビシステムにより宙港やそれに至る移動手段へのアクセスはイージーなものであるはずだが、整然と走り過ぎ去るボートや遥か遠くに思われる地平線はどれもこれも陽炎のごとく揺らめいて気が重い。

ブレスの指し示すポイントらしき方角を眺め、そこまでの移動の時間と距離を考え本気でスライダーの投射を頼もうかとまで俺は考えちまった。

フリーのボートを拾い、ここにも在るはずのチューブに乗り換え、何処の場所に行っても変わらぬ宙港スタンドの馴染みの景色やエスプレッソにやっとの思いで逢うくらいなら、何もない戦地での移動のようにお気楽なスライダーに跨った方がずっとましだと思ったわけだ。

そんな幻想を諦めて現実に仕方なく向かうことにした俺は、さっきから気になっていた事が俺を救い出すかもしれないかと、ポイントとは違うその場所へと踵を返し歩き出すことにした。

どんなときにも前向きに立ち向かうことがドラゴンの証であるかのように。
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