新たなる争い 4 (小説 輝石物語)

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Byフラメント

襲いかかる無数の白い影を、紫の軌跡を残しながら赤い閃光が切り払ってゆく。

斬撃と怒号の中、無限とも思われた白い影は次々と大地に崩れ落ち次第にその数を減らしていった。

激しい攻防の合間にゆらりと姿を現す戦士の赤い影は、心なしか肩で息をし苦しげな表情に見て取れた。


「あと二、三日は持つとは思うていたのじゃが、もうそろそろ潮時かのお…」

紫の魔少女のつぶやきに、不安げに若き指導者がその顔を見つめた。


不意に辺りが暗くなり黒い闇と化した空が、横に裂け低い重い声を語りだした。

「な、なんですかあれは」

天を仰ぎ、驚きに腰を抜かす若者に少女が応える。

「ダークリンクス、あれこそが真実の代弁者じゃ」


「鳥よ、狂えしツルギはやがて血にと染まる。嘆きの赤い舞は一昼夜は続くであろう」

神のお告げとも思える荘厳な言葉が響き渡った。

「…お節介な猫じゃが、助かったわい」

「わしはともかく、此処でポリテシャンを失うわけにはいかぬからの…」

そう言った少女は、見方の軍勢に次々と撤退を指示し、傍らの若者と共に新たなる強固な紫の結界にと潜り込んだ。

「ポルよ、この中におれば安全じゃ」

「このままでもカルの奴は完璧なる最強の戦士であり大陸でも奴にかなう戦士など今はおらん、粗暴で短気で下劣ではあるがの…」

「じゃが、奴の真の姿、狂戦士としてのアレは次元が違う。避けようのない天災の如く無慈悲な神の裁きの如く、アレはこの辺り一帯を場合によってはその出現した地方全部の生きとし生けるものを、時として切り裂いて全て滅ぼしてしまうのじゃ、敵味方の区別なく善悪の区別なくな…」

「近くに居てその滅びの裁きからは逃がれることなど叶わぬ、このように違う次元にでも逃げ込まぬかぎりな」

「そんな…彼は今のままでも十分に狂戦士と呼べるほどの強さであるのに…」

ポリテシャンの声を遮るようにルナンが叫んだ。

「見るのじゃ、哀れなる狂戦士の赤い舞いを、悪夢に囚われし嘆きの姿を」


そしてそれは唐突に始まった。


「ね、姉さま…何処?」

どよめいて怒号飛び交う戦場の中、静かで哀しげな問いかけが微かに響く。

立ちすくみ俯いた戦士は深紅の嘆きのような輝きに包まれ、普段の粗暴な態度とは打って変わり、泣いている迷い子のようにさえ見て取れた。


「過度な戦いが狂戦士化を誘ってしまったようじゃな、こうなってはわしでさえも手がつけられぬ」

ルナンがつぶやく間に、戦士がゆっくりと面を上げる。

「何処?」

その問いかけに辺りを取り囲み様子を伺っていた邪悪な白い渦が飛散した。

何が起きたのかもわからぬ出来事だった。

辺りを見回すたびに戦士がつぶやくたびに、周囲の者が切り裂かれ崩れ落ちて逝く、敵見方の区別なく。

あっとゆう間に戦士の周りが静まり返るとその姿はふわりとかき消え、遥か遠くの群れ惑う敵軍の真ん中にそれは忽然と現れた。


其処から先は皆同じであった。


「此処にいるの?」

つぶやきが起きるたび戦士の周囲は虚しい沈黙にと変わってゆく。

応えるものなど一つもなく、行き場のない戸惑いと消えることのない哀しみだけを其処に残して。


「アレは遥か昔、失ってしまった最愛の存在を見出そうとしておるのじゃ、そのために周りの動くもの遮る全てを切り裂きながら探し回る。永遠に手に入らぬものを探し求める哀れな行為じゃよ」

その音もなく一方的な戦いとさも言えない残虐的な哀しき放浪は、それから一昼夜に及んだ。

あの黒い空が告げたとおりにと。

惨殺の昼夜が明けた頃には、動くもの全てが滅んだ何もない大地に、戦士がただ独り残されたままで立ちすくみ、声もあげずに泣くばかりであった。

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