最果て  3  (小説 ベアルドナルドラ物語)

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Byフラメント


先客がいた。

おやっと思いながらベアードが見つめた先には、同じ思いなのだろうか珍しげにこちらを見た男が食事をしていた。

「お先に頂いてるよ」

そう声をかけてくれた男の斜向かいにベアードが腰を下ろす。

先ほどの主人が同じように無愛想に注文を取りに来る。

「なかなか忙しそうだな」食事と飲み物を頼んだあとベアードはこう付け足した。

「この辺りは住む人もいないからな人手がたりないのさ」

代わりに常連客らしき男が答えた。

「お主も旅のものなのか?俺はベアード、一介の旅の戦士だ」

その言葉を確かめるかのように改めてベアードを眺めたあと男が答えた。

「俺はゲット、この国に雇われている警備兵だ」

その男の醸し出す威厳と風格を感じながらも、そうかと頷くベアード。

互いに訝しげに見ながらも運ばれた食事を食べ続ける二人。

「時に戦士ベアードこんなところに何の用があって」

何気ない素振りを装い尋ねるゲットに、ベアードも言葉を選び返事を返す。

「南方の戦乱が時期的に収まって職を失ったからな、東国を抜けて国境を越えたら此処に宿があったと云う訳だ」

「傭兵志願か…」

帰ってきた言葉の真偽を確かめるかのように一時を置き飲み物を開けるゲット。

「北方なら職にありつけると聞き及んだ訳なのだが」

沈黙の意味合いについて考えながらベアードも置かれていたマグに手を伸ばす。

しばしの沈黙が続く、奏でられる音は食器の奏でる音と頻繁に手にされては置かれるマグの音だけだった。

「見ただけで…お前が大した奴だと俺にさえわかる。中央とは違って国境を区切る大河もこの地では意味がない、警備隊はいつも人手不足で隊を仕切る隊長も俺はよく知っている…どうだベアードその気ならうちに来ないか?」

「ありがたい申し出だゲット、この見知らぬ土地で宿もなく困っていたところだ是非紹介を願いたい」

相手の素性はいざ知らずゲットが持つ戦士としての正直な雰囲気に、ベアードも話を受けることに決めた。


「戦士ゲット」

「ゲットで構わんよ、俺はお堅いのには肩が凝るからな」

「ならばゲット、貴殿はここには何の用で?」

打ち解けた様子にベアードは素朴な疑問をぶつけてみた。

「ああ、休暇さ、休みの間に相棒も休ませようとしてな。連日の勤めに相棒も溜まっていたようだからな」

「こちらに来て早々に口が決まって俺も助かる、骨休みが開けたら警備隊の下まで連れてってくれ」

「ああ、そうする」

東国との国境からは馬でもって二日はかかる場所なのだがなと思いながらもゲットは返事だけを返した。


「おいオヤジ…」

食事代について主人を呼ぼうとしたベアードをゲットが止める。

「ベアード、お前泊まりの客だろ?この宿は泊り代に食事の分までは含まれてるんだ、飲み物は別だがな。飲み代は常連の俺のツケでいいからもう少し話が聞きたいな、なんせ最果ての地では他所のことなど耳に入ってこないからな」

「かたじけないゲット、では遠慮なく」

飲み代など何の問題にもならないベアードではあったが、この素性の知れない男戦士にに興味もあって、今度は代わりのエールを頼むために主人を呼ぶことにした。

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