ベアルドナルドラ物語(ファンタジー)

最果て  1  (小説 ベアルドナルドラ物語)

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「ここまでくればもういい頃合だよな」

北方の凍てつく大地を忽然と歩き出した男が、一人声を漏らす。

連れもなく独り言を発するのは、大陸中央からはるばる流れてきた戦士だった。

ベアードと名乗るこの放浪の戦士は傭兵暮らしが長いせいだろうか、とかく独り言が多かった。

「先ずは宿だな、真界ではともかく末界でこの姿であっては宿で一息をつくのが自然の成り行きだろうからな」

今もまた微かに光る足元の輝きを見つめ独り言を繰り返す。

真界では多くの呼び名と独自の姿を保つその光たちも、この人の営むばかりの末界においては、しもべとしての出で立ちは取れず、ただの眩い輝きにしか過ぎなかった。

もっとも幾段階も上の力を持つ妖い精霊や妖魔の類ならば、真の世界である真界と同様にそのもって生まれし姿をとることもできたのであったが。

かの東方の魔動王が述べたように、真界において最大級の力を持つ精霊王ベアードが、底辺の世界末界で人化を成し自らその力を封じ込め、こうして放浪の旅を続けること自体少々変わっているのかもしれない。

力あるもの故の戯れとは思えないほど、末界においての彼は、相変わらず素朴で無骨な戦士そのものであった。


この世界の大半を占めるこの大陸は、大陸に跨る大いなる大河の気まぐれな流れにより雨多き雨季には、幾つもの個々の土地へと区切られ閉じ込められてしまうのが常であったが、年の三分の一は流れさえ凍りついてしまうこの辺りは、延々と続く冷たい荒野が広がるばかりであった。

「寒さ以外は往来を妨げるモノなどないと云うからには、俺の求めるものもあるだろうからな」

この普通なら口を重くするはずの寒さの中で、ベアードの独り言は止むこともなかった。

そしてそれに答えるかのように精霊たちの瞬きも絶えることなく続いていた。

「ん?あれは…」

主人の声に反応した光が足元から飛び出してゆく。

「そうか、宿なのだな」

暫くして舞い戻ったそれに、言葉なき報告を受けたベアードは、取り敢えずその歩みを早めることにしたのであった。

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