気まぐれ短編集 ブラックブック

妄想の彼方にて  (珍妙なるペンネームの訳)

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とかく幼い頃からボクは他人から影響を受けやすいタチであった。

自身の両親を他人と評するのは甚だ失敬なことかもしれないが、自身以外の人々を他人と仮定することは、そう乱暴な話ではないだろう。

とにかくその両親の言葉を間に受け、少年だった頃のボクは、実にいい子だった記憶が残っている。

勉学にはそれなりに励み、その頃は気づいてもいなかった自身の運動能力の欠落にもできないなりに立ち向かっていた気がする。

悪い友人からは、「君は勉学などに勤しまなくても良い評価が受けれて羨ましいよ」などの策略にも似た言葉を受ければ、なるほど勉学など適度で構わないのかなどと鵜呑みにし成績を落としたり、他の友人から、「君は女子の間で人気があるね」と騙されては有頂天になっていた。

無論そうした言葉にまんまと乗っかり、女子に近づいて話たりすれば激しく拒絶などされていたのだが。

そのときは、実に恥ずかしがりやの娘なんだなと自身の中で、都合よく勘違いなどするばかりであった。

それでも歳を重ね、他人の評価が愚かな自身に見え出してくると、他人の何気ない悪口にひどく心を痛ませこの世の全てを呪うようにと歪んでいくことになっていた。

学び舎を離れ勤めにと出ることになってからも、初めから他人を疑う自身が仕事での好評など受けれるはずもなく、自身の価値を理解できない世の中に憤慨する毎日っだった。

他人と意思疎通する努力をすることもなく、仕事さえも放り出し家に閉じこもる日々が続き、その日も唯一の愛すべき他人である鏡に映し出された自身と話しているうちに気づいてしまったのだ。

これはきっと夢で今の自身は誰かが生み出した妄想にすぎないと。

諸君もよくよく考えてみると良い、何故ならば自身の真の姿などみることができないからだ。

見えるのはこうしてキーボードを虚しく叩くばかりの自身の腕や足、身体の一部であり、鏡などに映るものそれは真逆にすり替えられた偽物の顔にしか過ぎない。

つまり他人から見える自身は偽物にしか過ぎず、本来の優れた筈である自身は不当に隠され、人付き合いの下手な何も能がないものとして貶められていると。

このような、末期的な病的な考えに取り付かれているこの自身の存在さえも、取るに足らない愚か者の妄想にしか過ぎないのではと。

然るにボクは今に至ることになったのである。

そうボクは、真実の、幸福に絡められた素晴らしき自身の姿を無駄に探すため、ありもしない妄想の彼方へと旅立つことにしたのだ。

誰も読みはしないこのような虚言にみちた話を綴ることによって。

いちごはニガテ
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