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ミンストレル

旅の道連れ  1  (小説 ミンストレル)

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乾いた道が続く。

道とは名ばかりの荒れ果てた大地に渡る、踏み固められただけの細く長く続く帯のような道。

もう日が暮れ始める時刻だろうかひとりの男がそれを、西へ西へと歩いてゆく。

男は質素な身なりで、手荷物といえば肩にかけた袋のみであった。

秋でさえ寒さも染みるこの北の大地では、あまり見慣れない出で立ちである。

旅の商人ならばエークウスに繫がれた馬車で、貧しい旅人でさえもカメルスに跨って行き来していると云うのに、この男ように徒歩で一人旅など盗賊にどうぞいらっしゃいといわんばかりの有様なのだ。

いつしか日は沈み歩みを止めた男は、道から少し外れまばらに生えた潅木の脇に立ちすくんだ。

「天空の使徒よ、いかずちの下僕よ、きたれ」天を仰ぎ男はつぶやいた。

やがて男の頭上に闇が広がり不意に稲妻がひらめくと、激しい衝撃と共に近くの潅木は焼き焦げ、炎を上げ男の脇に倒れこむこととなる。

男は驚く様子もなく脇に腰を下ろし暖を取り始め、炎がうつる男の瞳は、先ほどの頭上の闇にも似た暗い闇色を湛えるばかりであった。


炎が呼び寄せたのか、静けさが打ち破られ、辺りはエークウスの荒い息と重なる足音が満ち始める。

「…きたれ」

気配に気付いた男は、慌てることもなく静かにつぶやいた。


「よう、俺たちにも暖かい恵みをわけちゃあくれねか」

ざわめきのなか、下卑た声が響く。

旅人を襲う盗賊らしきものたちのようである。

男は身動きもせず返事もしない。

相変わらずただ、炎を見つめるばかりである。

「聞こえねぇのかぁ?このつんぼ野郎!」

下卑た声が、さらに大きさを増す。

「うっせえな この俺様が代わりに遊んでやるよ」

背後の暗がりから男の代わりに何者かが答えを返す。

闇から突然現れたその声の持ち主はまだ若く、胸当てと腰巻だけのその姿は、炎を見つめている男よりもずっと軽装だった。

「ん?なんだとぉ小僧、靴も履いてないで寒さで頭までイカレちまってるのかぁ?」

「俺様には寒さなんか関係ねえんだよ 極寒の冥府の住人の俺様にはよ」

少年の奇妙な答えに下卑た男たちは笑いを上げる。

少年はむっとしたように頬を見つめるだけの男に聞いた。

「よぉ デルドロル …様 こいつらを好きに甚振っちまってもかまわねえだろ?」

「好きにしろ、それに言葉に気を使うことはない」

「だったらリングの呪縛をそうしてくれよ…じゃあとっとと始めるか」

そう言って少年は手にした探検を振りかざし馬上の輩どもに無造作に突っ込んでゆく。

少年は吹き渡る風のようにすり抜けては近づき、短剣で賊どもの首元を切り裂いてゆく。

あっとゆう間に馬上の主たちは皆、転げ落ち残された馬も散り散りに逃げ出してゆくことになった。

「けっ 口ほどにもねぇな」

転がる血まみれの輩を蹴飛ばしながら少年ははき捨てる。

「世話かけんじゃねぇよ クソッタレ野郎…」

「…えっ 思ったことが言えちまうぞ」

「口の利き方など気にはしないのだ。わが身を守ってくれさえすればな」

デルドロルと呼ばれた男は答えた。

「けっ怠け者野郎が 呪縛のリングの使い手ならこんなカスどもなんか眼じゃないだろうに」

憤慨した少年は文句を言い始めた。

「詩人は、争いなどしないものだよリノセロス、手数をかけたな」

「まぁいいや 争いごとは歓迎だしな」

少年は額に突き出た短い角を誇らしげに掲げ男に答えた。

少し照れたような横顔で。

「大体この辺りをひとりでほっつくことなんて 冥府の使徒である俺様にでさえわかるってもんよ」

「なら、どうだ?」

「なにがだよ」

「一緒に旅をしてみるか?二人連れならさほど目立たぬだろう」

デルドロルの申し出に眼を輝かせて少年は即答する。

「オっ オメエがそうゆうなら そうしてやってもいいぜ 特に冥府じゃ用事もないしな」

「では決まりだな、エークスを創造できるか?」

「まかせとけ!」

快諾下少年は、エークスを闇より創造し始める。

短い角がついてる以外は寸分も狂いのない見た目のものが現れた。

相棒が増えたこの謎の詩人の旅は、始まりに過ぎないのであろうか?その答えは夜空に輝く赤い月さえもまだ知らなかった。






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