新流譚  巻の三  (小説 遷都物語 外伝)

author photo

Byフラメント

-

人麻呂にとってなかには未だ理解のできない話もあったのだが、いずれ理解するとゆう言葉にはうなづけた。

弥彦の話に頷き、時折周りの景色に感嘆し馬の歩を進めてゆく。

昨晩までの強行な馬上の旅とは違い、実にのんびりとしたものだった。

半時も過ぎた頃何かの気配を感じ、暫く口を噤んでいた人麻呂はまたもや思ったことを尋ね事とした。

「ところで弥彦どの、今朝がたから周りに現れては消える気配、そう、この気配はなんでございましょうか?」

人麻呂の問いに、弥彦は馬を止め驚きを表した。

「ほほう、目覚めにいたらぬその身で、微かな鈴音の気配を気取るとは…」

人麻呂に答え、何かに耳をすまし低い声を響かせる弥彦。

「鈴音、姿を見せるのじゃ」

辺りを漂う気配が強まり少女の形を象り、それは馬上の弥彦の前に膝まづく。

「おかしら、ここに」

赤い装束を纏い長い髪を束ねた少女が、膝を突き俯いたままこたえをかえす。

「四奇の一人、炎奇の鈴音じゃ」

「鈴音と申します」

面を上げた少女は不遜な面持ちで人麻呂に短く名乗った。


「そんなに客人が気になり疑うのならば、いっその事試してみたらどうじゃ。どうなろうと保障はできぬがな」

態度をかえ冷たく言い放つ弥彦。

「良いのでありますか?」

眼を輝かせこたえを返す鈴音。

面白そうに口をつぐんだままの人麻呂。

「どうじゃ、構わんじゃろ?人麻呂どの」

弥彦の問いに人麻呂は笑いながら口を開いた。

「良くはわかりませぬが、どうかお手柔らかに頼みます」

どこからくるのだろう、この凡庸な青年には怖れなどないのだろうかのんびりと余興を楽しむかのように人麻呂は馬に跨ったまま成り行きを楽しんでいる。

間髪をいれずに、矢のような数本の暗剣が疾風のように人麻呂に襲い掛かる。

突き刺さるかにみえたそれが人麻呂の目前で、何かに弾かれたかのように皆地面にと落ちてゆく。

素早く動く目に見えない鞭にでも弾かれたかのようだった。


「怖いなあ、勘弁してくださいよ」

当たり前の成り行きのように、人麻呂はのんきにかまえているだけだった。

「ちっ!小ざかしい…」

その様子と言葉に驚き、鈴音の顔色が変わる。

鈴音の冷徹な仮面は剥ぎ取られ全身に燃えるような殺気がみなぎった。

韻が結ばれ渦巻く業火が立ち上り始めた時、弥彦が一言小さく呟いた。

「それは危ないことぞ鈴音、保障はせぬと申したじゃろう…」

「おかしらが許した事ではありませぬか?もう術を止めることなどできませぬ」

鬼気とした鈴音の声。


「やれやれ、お主がじゃよ鈴音」

しかし、たけり狂った業火に包まれた鈴音にはもはや弥彦の声など届いてはいなかった。

暴れ狂う炎の固まりは人麻呂ばかりでなくその身の周り一面までを巻き込み、天を覆いつくさんばかりに一気に膨れ上がってゆく。

何もかもを焼き尽くす怒りの業火は、人麻呂とて例外ではないはずだった。

弥彦はそれを困り顔で無言で眺めている。

しかし、炎に呑まれたはずの何物も焼き尽くされたはずの場所から怒号が響きわたった。

業火にも負けない怒りに満ちた怒号が響いたのであっだ。



関連記事
スポンサーサイト
Share
小説  鬼畜   (6)
世界 改訂版 (ファンタジー小説) (1)
小説  サンドラ (1)
恋愛小説 (16)
乾き 改訂版 (8)
蒼き日々の情景(私小説) (5)
ベイサイドペイン (3)
気まぐれ短編集 ブラックブック (8)
改訂版  娼婦はなんでも知っている (1)
娼婦は何でも知っている(Rファンタジー) (51)
援交記 (4)
小説 メロンパン(悲しき現実) (3)
戯言 (暗い詩) (1078)
詩・散文 (949)
嘆き (131)
君に(大好きな君に捧ぐ言葉) (90)
詩 (639)
七分 (56)
つれづれなる散文 (19)
ファンタジー 魔導人形シリーズ (38)
冥府の守護者 (2)
荒ぶる人形 (4)
凍てつく人形 (6)
人形使い ~グレムと楽しい仲間たち~ (18)
オールドファイター(ファンタジー) (7)
人魔再戦 (1)
ベアルドナルドラ物語(ファンタジー) (31)
全知全能の使役師 バンズ(ファンタジー) (20)
旅の少女(ファンタジー) (1)
ファンタジー 輝石シリーズ (17)
泣き虫王子と三つの輝石(改訂版) (2)
輝石物語 (10)
Legendary Mage & Almighty pyroxene (5)
遷都物語 (10)
ジェノサイダー (4)
ミンストレル (1)
雑記 (345)
官能小説 (72)
虚構の夢(官能小説) (22)
被虐のうた(官能小説) (23)
荒廃(官能小説) (10)
被虐の夢路(官能小説) (2)
爛れた日々(官能小説) (0)
ラバーズ (官能小説) (5)
改訂版  下衆 (官能陵辱小説) (7)
官能小説 エイリアン (3)
砂(小説) (0)
小説 水ケ谷探偵社事件帳 (0)
小説 終春 (0)
カウンセラー (0)
挨拶 (2)
SF小説 さよなら人類 (1)
真夏の幻影 (6)
故郷 (0)
陽炎のように (1)
よろず何でも相談社 (6)
サッキュバスの惑星 (5)
魚人の街 (3)
S級エージェント ファルコンズアイ (2)
プチーツァ (4)
浅ましき夢をみし (1)
ノイズ (SF小説) (5)
戦乱の時代 (1)
堕ちゆく世界と慈悲の女王 (3)
メトロの住人達 (スパイラル銀河 アルタイル) (10)
異界転生 (ファンタジー小説) (2)
シーフ 賊と呼ばれた男 (20)
真昼の月と夜の海 (3)
小説 バイオール (2)
何か (擬似恋愛小説) (4)
ユニーカーズ 苦労人な私 (ファンタジー小説) (2)
世界 (20)
ギミック 最悪なパーティーがゆく (ファンタジー小説 (1)
イケメン彼女 (3)
原罪 (2)
漆黒の邪龍 DirtyDrgon (8)
気が付けば大魔王 (5)
ファンタジー小説 パールパピヨン (2)
転生 (2)
記憶 (3)
SF小説 バッドエンド (2)
小説  GENZI (1)
ジゴロ (3)
プロジェクト AF (1)
小説 エセエス (1)
詩ですらない何か&自己満足 (1)
小説 思い出 (3)
詩人の愛 (1)
小説 ブロガー (1)
好きなもの (1)
トレデキム   漆黒の邪龍 ダーティードラゴン (11)
埋没   ~ セフレ以上恋人未満 ~  (恋愛小説) (1)
迷子  官能小説 (7)
ブラックブック 短編集 (1)