新流譚  巻の二  (小説 遷都物語 外伝)

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Byフラメント

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その夜は長旅の疲れか、はたまた弥彦の術のせいなのか二人の来訪者は程なく眠りにと落ちていった。

翌早朝、弥彦の館にもう一つの気配がふいに現れる。

気配ばかりの姿なき声が弥彦に話しかける。

「おかしら、姫様のお呼びでございます」

「何用かの?」驚きもせず受け答えする弥彦。

「来訪者の一人を連れてまいれとの仰せでございます」

「では、ごめん」

目の前の気配が一瞬だけ来訪者の眠る隣室に飛び、やがて消えてゆくのを弥彦は感じていた。

…鈴音のやつめ 余ほど気になるとみえる
心の中で呟きながら弥彦は隣室へと向かう。

隣室では人麻呂がまるで夢を断ち切られたような面持ちで、ひとり目覚めていた。

「どうじゃ、目覚めたかな?」音もなく現れた弥彦が問う。

「手数じゃが同行を願いたい。姫が待っておるのでな」

「姫とは?…いや、では支度をいたします。それと連れがまだ目覚めぬのですが…」

「そちらの御人には用なきこと、お解りであろう?」

人麻呂は無意識にうなづいていた。

己だけに姫とやらが用があると、なぜか納得をしていたからであった。


一人、身支度を整え館の外へと出る。

暫くして現れた弥彦に連れられ裏手に回ると、小さな馬小屋があり元気な馬が二頭つながれていた。

「弥彦どのにお尋ねしますが、確か夕べはこのようなものなど見当たらなかったような気が…」

「なに、子供だましじゃよ、たいしたものではない。四奇四尾にとってはほんの戯れじゃよ」

あっさりとした答えにもなぜか納得がいく。

馬上では退屈しのぎであろうか、夕べとは打って変わり饒舌な弥彦がなにかと人麻呂に話しかけてくる。

これから向かう先、ここでの生活など内容もざっくばらんに。

それを興味深げに人麻呂は聴くばかりだった。

「たいした距離ではござらんが老体にはきつい道程なのでな。馬でも使わんと骨がおれてしまうのじゃよ」

馬の背に揺られながら、併走する弥彦に笑いながら話す。

「その…先程のシキとシビが司る術には、時や道をかけるものは無いのでありますか?」

馬上の人麻呂は、ふと胸に沸いた疑問を尋ねてみた。

「むろんわしの操る禁呪邪法の中には、そのようなものもあるがの。ヒトガタとしてウツワとしての人麻呂どのは構わんじゃろうが、四神獣の赤鶏王としては、わしの術に頼るのが面白くないであろうと思うてな。それに只でさえ厄介な禁呪に、異なる大流である三叉どのを招きいれたら現世の流れの決壊を齎し時が迷いかねんからのお」

「セッケイオウ?ミツマタ?とはわたくしの事でございましょうか?」

「そうじゃ、そなたの真名(マナ)真の名の事じゃ」

真顔になった弥彦の声。

「…マナ。…それはもしかするとわたくしめの心に時折現れる、あの声の持ち主の事でございますか?」

「左様、ワシには見えるのじゃよ、そなたの真の姿がの、優美な三尾の持ち主である烈火の王の立ち姿がな。それに目覚めは近く…いずれ」

それきり弥彦は、再び他愛のない会話を続けはじめるのであった。

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