遷都物語

青龍と蒼輝 一  (小説 遷都物語)

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 静城京 朱雀大路

羅城門から朱雀門へと続く乾いた大路を一人の男が歩いている。

どんな手管を使ったのであろうか、いつもは権限を笠に勿体ぶって足止めをしがちな顔調べを、その男はキリン(麒麟)とだけ名を名乗りスルリと通り抜けていた。

異国風な顔立ちを僧形にそぐわない長髪で飾り落ち着きなく伺い歩くさまは、男を得体の知れない胡散くさに包むようだった。

「それにしてもここは都にしては人通りも少ねえし、道幅だけ広く殺風景きわまりねえな」

確かにキリンのつぶやくとおり処々に建っている数々の寺院は、いずれも古ぼけて色褪せてみえる。

大陸人キリンにとってここは、かの張安と比べ見劣りがするのは仕方のないことだったかもしれない。

この時代の静城京は、かつて繁栄を誇っていた頃よりも影が薄く淀んだ空気が所々に漂っていた。

「あちこち濁って澱んで、大路のこんな所にも蠢いてるようじゃしょうがねぇとしか思えねえな」

見つめる先に動くモノさえないと云うのに、さも何かを見つけたかのように近づいてゆく。

「瘴虫の類だな。こりゃあ」

確かに禍々しい空気が漂っているようだ。

はっきりとは見えないが小刻みに蠢くかのように嫌な気が見て取れる。

あと半歩ほどの距離にまで近づいた頃だろうか、一瞬キリンの内なるものが垣間見えた。

それからそれは徐々に消えてゆき、姿を潜めて気配までもなくなる。

が突然、異様なまでに口が広がってゆくではないか。

頬から耳にまで横にながく裂けたキリンの顔半分が、後ろにガクリと垂れ下がる。

やがて大きく広がる裂け目からおぞましい何かが顔をのぞかし這い出し始めた。

あくまでも常人には見えもしない出来事ではあったのだが。


ときは延暦元年、避けようのない時代の流れの始まりの年でもあった。



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