伝説の魔道士と全知全能の石  闇の司祭

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Byフラメント

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─ 東の大陸の西方 バランナ海 ─

帝国の最新型帆船黒龍号が、光の島々の南沖を航行している。

季節がら、バランナ海は雲ひとつなく波も穏やかで、順調な船旅が続いていた。


「司祭様、あと三日もすれば例の島が遠眼鏡で確認できますがね」

船長が舵を仕切りながら、隣に佇む大司祭に目をやった。

「島の名はカオスとゆう」司祭は問いには答えずつぶやいた。

「はぁ、そうですかい」

「我らが発祥の地、いや全ての始まりの場所だ光と闇の」大司祭は構わず続ける。

「名前や言われは知らねえですが、船乗りの間では呪いの島と呼んでおります」

「海岸は見上げるほどの屈強な岸壁で、所々見え隠れする岩に囚われ多くの仲間の船も行方不明に…」

「カオスは望まぬものを拒もうとする島だからな、呪われていると言えばそうかもしれぬ」

「上陸できなければ、お目当ての物も探しようがないねぇかと…」

「案ずるには及ばぬ、その為にワシがおるのだから。」

「では、その時は何卒おねげぇします」

「言うまでもなきこと」

さらに二人の会話は続いてゆく。


相変わらず穏やかな波の中、帆に爽やかな風を受けながら航海は順調だった。


何処からともなく飛んできた一羽の海鳥が、羽休めの為だろうかマストの上にと舞い降りた。

うつむき加減なその様子は、まるで船上の様子を見つめているかのようだ。

丸い瞳は確実に船の上の有様を映し、羽毛に包まれた鼓膜は二人の会話を高みより捕らえていた。

海鳥はひかりの島に住む魔道士の移し身のひとつだった。

永劫の時を過ごす伝説の名もなき魔道士の。


闇の司祭がちらりと視線をマストに向けたあと、何もなかったかのように声を張り上げ会話を続ける。

「ときに船長、全ての始まりの詩について聞いたことはあるだろうか?」

「司祭様、輝石がどうのこうのってヤツのことですかい?」

「左様、正確には<世界の真理についての考察と推察>と言う名の小論の事なのだが」

「太古の賢人による推論が詩の形で伝承されているアレのことだ」

「この世界、つまりわしらが住む大陸や海洋、それらを包括するワクセイとギンガについての創生の物語だ」

「ワクセイとギンガって奴は何者ですかい?」

「この世界を乗せた場所とそれらの集まりの事だ」

「はぁ」

「まぁ理解できずとも、仕方なき事なのだが…」

「序章にある混沌とは、無数の塵つまりホコリのようなモノを指し示している。」

「無数無限のギンガが存在する以前の時間 無物なる虚空には粉塵が混沌と満ち溢れていた」

「わたしが聞いた詩とは、ずいぶん毛色が違う気がするんですが」

「今の世に伝わる詩は、太古の知恵を手直ししたもので、元もとの記述から随分と抜け落ちておるからな」

「そんなものですかねぇ」

船長はよくわからないまま大司祭の話を聞き続ける。

「やがて粉塵は 互いに引き合いながら集まりだし幾つかの力と流れに代わっていった その中でひときわ大きな力の固まりたちが 多くの集団を作り出し回転をしながらそれぞれの源となっていった」

「なんだか小難しいお話で、私なんぞにはさっぱりわかりませんです」

「そうだな、こんな益体もつかない話より中で、成功した時の褒美について話す事としよう」

「できれば、私もそのほうが」

船長は顔を綻ばせ相槌をした。


話を終えないうちに大司祭は何気ないそぶりでマストを見上げ、船長には理解できない古の言葉を呟きだす。

唱えられた言葉は漆黒の炎と化し、マストの上の鳥を直撃する。

あっという間に鳥は黒い炎に包まれ、二人の目の前にと落ちてきた。

驚く船長の目の前で鳥の姿はやがて白い布のようなものへと変り、灰も残さずに消え去ってしまった。


「これはいったい?」

驚いたままの船長に闇の大司祭は問いかける。

「ところで、名無しの魔導師について聞いた事は?」

「伝説の名もなき魔導師のことですかい?」

上ずったままで船長は応える。

「そうだ、あ奴 <Nameless > とかつて呼ばれていた者のことだ」



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