奴隷誓約書


「初めまして理恵です。貴方が和磨さん?でしたらこれを収めていただけますか?」

理恵の最初の挨拶はそんな感じだったと思う。

今でも待ち合わせで時々使う、桜木町駅前のビル二階にあるカフェのボックス席でのことだ。

「これは?」ボクはそうこたえて大きめの角封筒を受け取った。

「サイトのメールでお話した、奴隷誓約書です。印鑑も押して印鑑証明も同封してあります」

理恵と知り合ったその手のサイトの中で、何度かのやりとりの間そんな話題があったことをそこまで聞いてようやくボクは思い出していた。

「オレの方はオレ本人である証明はしなくてもいいの?なんなら免許証を出そうか?」

「拝見してもよろしいのですか?」

「たまたま持ってたからどうぞご自由に」

そう言ってボクはズボンのポケットにいつも押し込めてる免許証の入ったケースを差し出した。


「…サイトと同じ写真を使ってるのですね」

「ああ面倒だからさ、オレ自身の個人情報など知れてるから」

理恵の言葉にボクは笑いながら応えた。

「それよか理恵さん、斎藤理恵さんてゆうのか…、印鑑証明なんて実名から住所までまるわかりだぜ。オレが質の悪い男だったらどうするつもりなんだい?」

「私が選んだのですから、和磨さまを」

「様はくすぐったいな、それに誓約書だなんて」

「誓約書は基本的なことしか書いてありません、和磨様がご了承して頂けるなら私に出来る範囲の事柄を加えてくださっても結構です」

誓約書に目を通してるあいだ、ボクはそんな理恵の言葉を聞いていた。

誓約書の内容は三条の事柄が記載されており、ご丁寧位に署名と印が押されていた。

内容はざっとこんなものだ。




第一条 奴隷は主人に奉仕をしなければならない。また、その奉仕を看過することによって、主人に不利益を起こしてはならない

第二条 奴隷は主人にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。

第三条 奴隷は、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己の利益をまもらなければならない。




「えっと、なんかロボット三原則みたいな内容だな」

「和磨様の趣向に合わせて考えて作りましたから」

「まあ、いいかな…たぶんオレの場合…性的奴隷として理恵さん、あんたを扱うことになると思うけど」

「もちろんそれが望みです!」

そんな会話のなか、初めは退屈しのぎで始めたサイトへの出入りが非常に現実的なものになってゆくのをボクは感じていた。

それが非常に非現実的な世界の始まりと知らないままで。
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