Category: 恋愛小説  1/1

大人に (私小説 蒼き日々の情景)

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「あっ、…カズちゃんって…いつも何も喋らないわね、ああっ」喘ぎ声の合間にえーこの問い掛けが混ざる。「………」聞こえなかったように無言のまま和也はコトをすませた。えーこの身体から身体を離し備え付けの粗末なベッドに腰掛けて辺りをみまわしていると、真っ赤なツメがタバコを差し出してくれた。「マルボロだったよね?」「ああ」今度は素直に答えながら、同じく差し出されたライターで火をつけた。白い煙が狭い部屋に沈黙をと...

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休日  (私小説 蒼き日々の情景)

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翌日、喉の渇きとともに起きだした和也は、軽くシャワーを浴びてファミレスに向かっていく。店の営業日は寮の食事が出るのだが、休日は管理人の都合で食事はない。寮に住む独身社員は、それなりに割増された月の給料で自炊や外食で休みの食事をまかなうことになっていた。寮費もそれに合わせて割引との事だが、和也は計算などする気も面倒で計算もしたことがなかった。朝の弱い和也はとりとめのない思いを浮かべ、ぼんやりとしたま...

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指名  (私小説 蒼き日々の情景)

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「確か今日は、公休じゃなかったよな」店に向かうタクシーの中、和也はひとりつぶやいた。指名の利く店ではあったが、いつも何か名前をゆうのをためらって指名をつげることがなかった。ただ、待つ事や他の姉妹店に回されるのがいやで、和也は予約だけ入れてタクシーに乗り込むことにしていた。三十分ほどゆられると、なじみの入口にとたどりつく。入り口で予約の名を告げ、狭い待合でまっていると人の来る気配がした。「いけだ様、...

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キス (私小説 蒼き日々の情景)

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和也には、帰るべき場所があった。生まれついたときから敷かれているレールがあるのだ。今の会社にいるのもいずれそのレールを走るためのものであり、若い和也にはそれが我慢できないでいた。自分の将来が自分で決められない、そんな和也の思いは会社の仕事に対して、いまひとつ真剣みにかける形で現れていた。将来に不安を抱いてるその他大勢の若者からすればそれは贅沢な悩みなのだろうが、和也の若さはそれを納得できないでいた...

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天使の望み (私小説 蒼き日々の情景)

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「んっ」和也は乳首を吸われ舐められる快感に思わず息を漏らした。「相変わらず、つまらない反応ね」ちょっとすねた顔でえーこが見上げる。「そんなことないさ、とても気持ちいいよ。お返しをしてあげるから」和也は寝そべっていた身体を起こし、えーこに抱きつきキスをしてやわらかい頂に吸い付いた。「あっ駄目。そんないに強いとちょっと痛いわ」痛みが伴う快感に陥り始めたえーこが和也を覗き見ると、そこには意地悪そうな表情...

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都合の良い女 (官能私小説 乾き 改訂版 1)

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誰と居ても 渇いていた何をしていても 渇いていた幾度求めたとしても その乾き 満たされることなどなかった仕事を終え部屋に戻れば、いつも待っていた。いや、待っているのではなく、ただいつも居た。このボクを待っているのではなく、まるで、この部屋の一部かのように。ひとみは嫉妬深い女だった。情の濃い女だった。気まぐれで浮気なボクの何処がいいのか。短気で寡黙なボクの何処がいいのか。求めればいつでも応じてくれた...

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情事 (改訂版 乾き  2)

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小柄な女だった変わった女だった男好きのする身体つきだった翌日、遅い時間に部屋に戻ると、ドアを開けたとたんに消毒の香り病院の香りがした。もう遅い時間であり、ひとみは待ちくたびれたかのようにベッドで寝息をたてていた。受付をしていると話にあった勤め先の制服なのだろう、ピンクの白衣のままで。「…ううん」覆いかぶさった身体の重みで眠りから呼び起こされるひとみ。眠り込んでる白衣の女のシチュに興奮し上着のボタン...

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酔夜にて (改訂版 乾き 3)

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酔った僕が好きと言っていた酔った僕が嫌いと言っていた酔いに任せて何度も求めると 何度でも応えてくれる女だったその日は週末とあって、部屋にも戻らずにそのまま後輩と馴染みの店に呑みに行っていた。「だかあさあ、ゆみちゃんオレと付き合ってくんなあかなあ」ろれつの怪しい言葉をカウンターに投げかける。「かずちゃんて、そんな事ばっかり」適当にあしらうように答が返る。「そうっすよ、かずさん。かずさんには、ひとみさ...

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酔いの果て (改訂版 乾き 4)

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勘のいい女だった勘の良すぎる女だった時々哀しそうな顔をしていた「何で来たんだ」酔いがさめたような声で、小声で話しかける。「だってかずくん、辰也君と一緒って言ってたから、また酔いつぶれちゃうかもって…」その言葉を耳にした辰也が割り込んできた。「ひどいなあ、ひとみさん。僕が一緒じゃまずいっすか?」首を振ってひとみがこたえる。「そうじゃなくって、辰也君と一緒だと楽しくてつい呑みすぎるってかずくんいつも言...

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翌朝 (改訂版 乾き 5)

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何をしても渇きが治まらなかった誰といても分かり合えると思わなかった何度抱いても隙間など埋まるとは思えなかった夜明け前、喉の渇きで眼が覚める。頭痛も少し残っている。下腹部の違和感は、腰の辺りで丸まって寝息を立ててるひとみが、僕のものを握り締めていたからだった。その手を離しトイレに向かう。用を足して水をがぶ飲みすると、酔いと頭痛が覚めてきた。その後ベッドに戻るとひとみが眼を覚ましていた。「ごめんねかず...

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浴室 (改訂版 乾き 6)

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よく喋る女だったよく笑う女だった黙り込んでるだけのボクの瞳を良く覗き込んでいたバスルームの前に立つとまだシャワーの音が響いていた。ドアをあけ中に入ると、その音は止んだ。「少しだけまってくれたら、すぐに終わるのに」「別に構わないだろ?」「…いいけど」再びシャワーの音と熱くこもった湯けむりがバスルームに充満する。「ねえ、かずくん寒くない?」音は止まずに問いかけられる。そして熱いしたたりが僕に向けられた...

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夏の夢  (小説 ベイサイドペイン)

夕暮れの港に船が繋がれている。むっとした海の風がことさら夏を知らしめす。寂れた田舎の港町はいつもの静けさが嘘のように、多くの人息で蒸れていた。「久しぶりで楽しみだねカズちゃん」見知った声がボクを見つめる。この港町に根付いてしまってから幾度目の夏だろうか。ボクは港が見えるはずのあの窓辺の部屋から連れ出され、港の前で座り込むことになっていた。「このお船があると、上手くみえないかなあ…花火」「ああ、でも...

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浴室を出て (改訂版 乾き 7)

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寂しげな女だったいじらしい女だった僕の望みなら何でもしてくれた先に部屋にと戻りベッドに転がる。シャワーのせいか頭と気分がすっきりしていた。「おまたせ、かずくんがまた汗をかかせるから」ちょっと恥ずかしそうに髪を拭く。背を持たれ横たわる横にちょこんと座り髪を拭き続ける手を、引き寄せ抱きしめた。「髪がまだ濡れているから冷たいよ?」かまわず上に招きよせる。近づいた唇に唇を重ね抱きしめ尻を掴み小柄な身体を押...

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痛みの系譜 1 (小説 ベイサイドペイン)

建物と建物の隙間から覗く海を眺めながら、僕はつぶやく。「海が青いなんて言う奴は夢の見すぎだよ、どうみても海の色は濁った緑色だ…」狭いベッドから身を起こし、窓を眺めるボクの背中に柔らかく腕が絡みついてくる。「カズちゃん、また何か変なこと考えてたでしょ?」裸の背中に、裸の胸が押し付けられる感触が伝わる。「別に…何も…ただカモメを眺めてるだけさ」振り向きもせずボクは、耳元によせられた長い髪に応えた。「嘘ばっか...

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痛みの系譜 2 (小説 ベイサイドペイン)

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乾きをおぼえ夜中に目覚めると、見知らぬアパートの一室だった。隣りで丸まってる小柄な女を起こさないように、そっと抜け出し流しを探す。1Kらしき狭い部屋は、殺風景で家具といえるものはほとんどなかった。流しに転がってたコップを手に取り、蛇口をひねる。思ったより響く水音に、ビクっとしたまま布団の方に目をやったがどうやら起こさずにすんだらしい。生ぬるい水の後味は、二日酔いの頭を徐々に覚ましてゆく。ズキズキと...

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年の瀬の予定 (改訂版 乾き 8)

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居るのがもうあたりまえだったするのがもうあたりまえだった狭いベッドで二人 重なったままいつも眠りにおちていた「年末年始は、どうすんだよ」12月も終わりを告げる頃、いつものように名前も呼ばないで聞いてみる。「年末は仕事だけど、お正月休みはバイトあけてあるからかずくんと一緒にいる!」僕の身体の下、さっきまでぐったりと余韻に浸っていたひとみが腕を廻ししがみ付きながら応える。「一緒って、毎晩一緒にいるじゃね...

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