FC2ブログ

「っもう、他に仕事はないの?美味しい感じの」

いつもの愚痴をわめき散らす私に、諭すような声がかけられた。

「先月の昇格試験に間に合わなかったのだから仕方ないでしょサリー」

目の前の薄い依頼書の束を私から受け取ったイケメンが微笑む。

「いくらユニークとはいえランカーレベルが初級の貴女には、受けられる依頼なんてこんなものです」

「だからと言って薬草の採取や街での便利屋など宿代にもならないじゃない」

「でも宿代に困ることなんてないでしょ?」

受付のカウンターの中からじっと見つめるキラキラとした微笑みは相変わらずドキっとする。

「そりゃあそうだけど、ハイランカーを目指す私としては、もっと討伐とか…」

こんなやり取りは日常茶飯事だった。


最初の頃はこんな初級ランカーの私が、ウーマンズギルド一のイケメン受付氏相手に無駄話でもすれば、テンプレのように絡まれたものだったけど。

今ではそんな猛者はいないはずだったが、今日に限ってそんな珍しいことが再び起こってしまった。


「アンタ!いい加減しなさいよ!後がつかえてんのよ!ちびっ子が!」

それまでざわついていたギルド内がしんと静まりかえる。


「だから、そこは、特権でっ」

そんなテンプレにめげずにブーたれる私。

やれやれ面倒だなとゆう顔つきの受付氏。

それは私のブーたれに対するものだったのか、これから起こるだろう惨劇に対するものだったのか…多分両方かも知れない。


「いい加減にしろよ!このちびっこ!!」

後ろのテンプレが殺気をまして大声をあげた。

次の瞬間大きな音がして殺気が掻き消える。

「あー…誰でもいいから…片付けておいてくれないかな?…サリー、修理代はこの依頼で帳消しとゆうことにするからね」

そう言われて渡された紙に私はがっくりと項垂れてしまう。

「ランクアップをすれば、カウンタースキルも上手く使えるようになるから…それとボクの権限はこんなふうにしか使えないと早く理解してね」

体よくあしらわれた私はギルドを後にするしかったなかった。



スポンサーサイト




「ぅはよお…」

無防備に明け放れたギルドの建物に入り私は挨拶を絞り出す。

「サリー、もう直ぐ昼になるんだけど」

「昼前ならおはようでいいでしょ?」

疼くこめかみを押さえながら返ってきたやけに爽やかな声に言い返す。

此処ウーマンズギルドは朝が早い、サービスの一環であるランカーズ窓口では早朝よりギルド員が溢れ討伐などの依頼を勝ち取ろうとごった返す。

いや、朝が早いと云うよりは休み休憩がないのだ。

ギルドが受け持つ各種サービス窓口は昼夜を問わず需要があるからだろう。

それにしても窓口の中のこいつの顔は、私の眼からみても清々しい。

体調を表す目安となるパラメーターも良好で、とても同じ朝方まで飲食を共にしていたとは思えない。

「なんであんたは、そんなに元気なのよ…」

二日酔いと寝不足、あと食べ過ぎによる最悪の体調の私はジト目で目の前の爽やかイケメンに愚痴を漏らす。

「それは体質…スキルの恩恵もあるけどね」

わかってるよねとウインクをしてイケメンがこたえる。


通常のランカーズギルドの職員も高ランク者が多くこのウーマンズギルド内のランカーズ窓口もそれに倣っている。

粗野な粗暴の多いランカーの揉め事に対処するためらしいのでもっともなことだと思う。

ただし通常のランカーズギルドとは違い見かけの良い高ランクの若い娘でなく、此処ではイケメンばかりなのだが。


「ところでサリー、今日はなんの用?」

「依頼の受注に決まってるじゃない」

「どんな?」



「…わりのいいやつよ」

「えっ?」

わざとらしいまでに耳を向けるいけ好かないイケメン。

「だから、儲かるやつよ!」

「そうじゃないかなあと思ったから、これ」

受け渡された依頼書は、採取を示す青い縁取りがされていた。


「条件は中級ランク以上、高額の依頼完了料とは別に出来高による割増もあるみたいだよ」

「うますぎる話ね…」

「今回は別にユニーカーズ絡みでもないみたいだから、一度会って詳細を聞いてみれば?小遣いが欲しんでしょ?」

「そっ、そんなんじゃないわよ!ちょっとばかり物入りなだけだから!」

「はいはい物入りね、じゃあ会うだけあってみれば?」

その甘言に戸惑いつつも、遊ぶ小遣い欲しさに私は結局目をつぶることにしてしまった。


​ ​