Category: ベイサイドペイン  1/1

夏の夢  (小説 ベイサイドペイン)

夕暮れの港に船が繋がれている。むっとした海の風がことさら夏を知らしめす。寂れた田舎の港町はいつもの静けさが嘘のように、多くの人息で蒸れていた。「久しぶりで楽しみだねカズちゃん」見知った声がボクを見つめる。この港町に根付いてしまってから幾度目の夏だろうか。ボクは港が見えるはずのあの窓辺の部屋から連れ出され、港の前で座り込むことになっていた。「このお船があると、上手くみえないかなあ…花火」「ああ、でも...

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痛みの系譜 1 (小説 ベイサイドペイン)

建物と建物の隙間から覗く海を眺めながら、僕はつぶやく。「海が青いなんて言う奴は夢の見すぎだよ、どうみても海の色は濁った緑色だ…」狭いベッドから身を起こし、窓を眺めるボクの背中に柔らかく腕が絡みついてくる。「カズちゃん、また何か変なこと考えてたでしょ?」裸の背中に、裸の胸が押し付けられる感触が伝わる。「別に…何も…ただカモメを眺めてるだけさ」振り向きもせずボクは、耳元によせられた長い髪に応えた。「嘘ばっか...

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痛みの系譜 2 (小説 ベイサイドペイン)

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乾きをおぼえ夜中に目覚めると、見知らぬアパートの一室だった。隣りで丸まってる小柄な女を起こさないように、そっと抜け出し流しを探す。1Kらしき狭い部屋は、殺風景で家具といえるものはほとんどなかった。流しに転がってたコップを手に取り、蛇口をひねる。思ったより響く水音に、ビクっとしたまま布団の方に目をやったがどうやら起こさずにすんだらしい。生ぬるい水の後味は、二日酔いの頭を徐々に覚ましてゆく。ズキズキと...

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