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かつて何もない虚空に、ふと現れし混沌が流れを刻み始める。

大いなるその流れは、止むことなく永久に刻まれ、永遠の闇を生み出し虚空界に重なり澱んでゆく。

静寂で平和なる闇たちは、それぞれの更なる世界を産み落とし繁栄を続けていたが、いつしかその初母なる混沌はその無情さ故に、聖なる静寂を脅かす歪みさえも芽生えさしていた。

その無限なる流れの刻みの中、その矮小なる歪みは僅かな輝きを用いて静寂なる闇の世界を徐々に汚すこととなったのだった。




「陛下、またかの者が謁見を願い出ております…」

凍てついた氷宮の静寂を壊すかのような思声が広まる。

「フォルムですか…」

その界の名を持つ女王である裸・ウンブラ・キュームは、その華麗なる面影を少しだけ沈ませそう問いかけた。


創世の語りで継がれし永久なる静寂の闇の苑と呼ばれたヘルン。

その唯一者を誑かし形あるものとして貶めた邪悪な輝きの名を持つ存在に、その平静な心を乱したからである。

…蛇者フォルム 唯一者ウンブラを汚した邪なる物 これも因縁であろうか

そう彼女は描いたのだった。

眼下に広がる凍りついた領地を感じながら彼女は、刹那のため息の揺らぎをおこし、久方ぶりに下賤なる形を象ることに決めたのであった。




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「陛下におかれましては、今宵も麗しく」

闇雲に存在を表したその人型の主は、その無礼さを更に引き立てる形で慇懃に頭を垂れる。

取り巻きの思念が当惑の意を描く。

それを抑えるかのように女王であるウンブラはその青白いまでの人型で返事を描き始めることとなった。


「用件を申しなさい、フォルム」

彼女の思声はその住在する王宮のごとく冷たく澄んでいた。

「はて?用件ならば何度も申し立てているはずですが…」

悪びれた様子も描かれることはなくその形が答える。

不遜なるその形はフォルムの名を示すように周りを脅かすごとく輝きとして瞬いている。


「礼を尽くせとは、今更命じませぬが用件を描くのが真でしょう」

女王の型は揺るがない。

乱れを描くことなくフォルムをその力を用いて射据える。

それに対するように、笑いの揺らぎを伴いながらフォルムは臆することなく高みのものへと描き続ける。

「この世界の暗さと停滞を俺は黙っているわけにはいかないのです。下僕である霊どもの下位界を開拓せんがためにも、輝きの流れによる誇示固定は必要なもの。これをどうか…」

彼の主張は変わらない。

実際この永劫なる流れのの中で多くの闇界がそれぞれの存在を確定するために堕落を始めている。

そのような流れはウンブラをも時には揺るがしその配下なる霊界をも揺さぶっていることは確かだった。


「全てが同じく進むことは主母であるカオスの望みとは異なるものではないのですか?」

彼女は正論を描く。

しかしその描かれたものは、その内在する力の巨大さにも関わらず、目の前にかろうじて膝まづくその輝きを大きく揺らがせることはなかった。




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「シャル様のおられるこの世界、下位界は二つの理に分けることができます。空と大地です。世界が生まれ二つに分かれた時の最初の物たちが私たち竜なのです」

シャーラトンに少女が自らの事について語り始めた。

もっともそれは同一のものとしてのそれであり、言葉と共に理解とゆう形で流れ込むものであったのだが。


「明るく軽い空を翼あるもの翼竜が司り、冷たく重い大地を私たち尾を振るうもの尾竜が司る事となり、その二つの理の中から幾つもの物が生まれてゆきました」

「えっ?それだと今までこの世界に広く伝わる世界の理とは違うんだけど」

既に寄り添うように並んで座っていたシャーラトンは、驚きの声をあげかたわらの少女を改めて見つめる。

「この世界は火と空気と水と土からできていて、全ての物がその四大聖素に縛られてると聖会で説いてるのだけど。人や鳥や獣、異獣や魔物に至るまで全ての生き物はその理のどれかに属すると」

「聖会?聖魔教団会のことですか?二千年ほど前にできた人族の教えのことですね。確かに分けようとすればそう言った括りもできますけど、そもそも空の翼竜の庇護物である魂霊と大地の尾竜の庇護を受ける肉体を併せ持つ生き物は二つの世界の理の生み出した類なる結晶になるのですから、そのような微細な括りなど問題になりません」

悩めるシャーラトンに少女が笑顔で応える。

「世界の唯二の理のひとつ大地とも言える尾竜の私と同化したシャル様はもうそのような括りに縛られる存在ではないのですから」

少女の途方もなく想像がつかない話と、それと同列になったと言われる自身に、シャーラトンは驚きを隠せないでいた。





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