Category: シーフ 賊と呼ばれた男  1/1

至宝の探索 1 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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…感じる………きこえる?何かを感じたのは目覚めていたからであろうか?。遠い遠い忘れ去ったはずの記憶、深い深い埋もれていたはずの記憶。そんなものの中から引き出した答えは、視線と云う言葉であり、音と呼ばれるものだった。この閉ざされている場所この暗闇で、掘り起こされるものは無念と無情と無限とも思われた時のながれであったのだが、その忘れていたものものを、何かが呼び覚まそうとしている。その思いと、自身とともに。...

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至宝の探索 2 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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ブラーがそもそも今回の依頼を受けたのは、表の顔としての盗賊団の頭領ではなく幾つかある裏稼業のうちのひとつであった。各都市にある依頼組合の奥にある酒場にて声をかけられたのが始まりである。「シーフのブラー殿ですか?」そう見知らぬ男が声をかけてきた。見る限りはにこやかな笑顔ではあったが、エイブの眼を通せば明らかに疑いを持っている様子だ。「ええ、如何にも」そんな人族の裏表を知り尽くしてるブラーはそのエイブ...

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至宝の探索 3 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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人族でなく真霊宿であるブラーも、家族としての盗賊団においては立場もある。本来は忌み崇められる霊宿としてではなく人として霊友者であったエイブに育てられた彼は、それに恩義を感じており双在する繋魂の真霊エイブもそれを受け入れている。それでも彼の主魂はその自由な気質を持ち、その役割に支障がない限り自由な生き様を選び、依頼組合においてはシーフを描き席を置いていた。シーフとして描かれたブラーは、霊宿の力を用い...

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至宝の探索 4 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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依頼組合の建物の入口前で、ブラーはその記憶の情景を眺める事となっていた。エイブの記憶、正しくは育て親として生を全うし融合を果たした後の真霊エイブではなく、この下位界に出現した忌むべきもの真霊宿であるブラーが内在していた繋魂である古の真霊天の記憶であった。今の時に直して約一千年の昔、下位界と上界の遥かなる境が真なる霊導にて繋がっていたころのエイブの記憶であった。いつものような人族であったエイブの語り...

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至宝の探索 5 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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先程までの記憶の激流から立ち直ったブラーは、馬車に揺られながら目の前の男を伺った。勿論表面上はそんなことは描かず、このおそらく借りつけたものであろう馬車の車窓を眺める姿勢で。その姿勢を変えることなくエイブの眼を通し、向かいに座る男の内面を見開いてゆく。最初にノウムよりの使いと目の前が名乗ったとおりそれは真実を示し、刻まれた記憶も今回の依頼とは遠く、ブラー自身を確認するためだけの詳細だけが浮かび上が...

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至宝の探索 6 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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『いささかきな臭い話のようだな』心うちにエイブの声が響く。『アルヘムと言えば東の魔国と西の烈国を結ぶ神の道の中ほどの都市。その利便性と程よい距離において両国の思惑からまるきり外れるか重なるかとゆう地だ。かつての我らの都のようにな』エイブの声にブラーが自問する。『それは先程の霊天の古い記憶の中の天空界の一つだと示された名が、重要な意味があるとゆうことでしょうか?』『そうだな、タキュームなる名は残され...

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至宝の探索 7 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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大陸のほぼ中央に当たる都市国家アルヘムのとある館の一室で、三人の男たちが一つの卓を無言で囲み待ち侘びていた。三人が注目する卓の上にはひとつの古ぼけた石版が置かれている。しびれを切らしたようにフードを深くかぶり込んだ男が声を上げた。「貴様が声をかけたその男は使えそうなのか?」「…多分ですが、認証表の格付けは十分なほどで組合からの依頼歴からの推薦もありますので…」貴様と呼ばれた男が伺うように答えを返す。...

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至宝の探索 8 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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いかなる力、権力であろうか、本来なら手続きやら何やらで足止めを食らう入国の際の厄介事も素通り出来たブラーたちは、早々に案内された館で三人の男を前に待たされることとなっていた。正しく言えば馬車に同乗した案内人は部屋の外で控え、ブラーを待たせているのは見知ったノウムなる男ではなく目の前のフードを被った尊大な男と横の無関心を装った日焼けの男であったのだが。面倒だなといった顔つきを描いたままブラーはフード...

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至宝の探索 9 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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「ここでいいのか?」「迎えが来るはずだから構わないよ」そう応えたブラーは、再び以来組合の大きな建物前で馬車から降りる。「ではまた、三日後にここで」そう声を残し馬車が帰ってゆく。おそらくこの言葉少なめな男が、アルヘムのノウムのもとに直接戻ることはないだろうが何かしらの接触はするだろうとブラーは考えた。『お前たち揃っているか?』エイブの口で直接心に問いかける。ブラーのもとに数騎の気配が集まりだす。ブラ...

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至宝の探索 10 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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翌朝、亡名の森奥深くにひっそりと佇む館に依頼組合本部がある交易都市より帰還したシャーラトンは、忙しげに団の所要をこなす少女を見ることとなった。奇しくも真のブラーと同じ顔をしたその少女は、漆黒の翼をその細やかな背にたたみブラーとは違う黒髪を束ね上げその黒い瞳に真剣な色を浮かべ、皮紙の束に目を通している。その間にも謁見の者たちを相手に支持を告げ、本来の部屋の主ならば描けないほどの勤勉さで業務をこなして...

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至宝の探索 11 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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…ごめんなさい不意に弾き出されたシャーラトンは、そんな思いを感じた気がした。自らが浮かび軽くなる感覚の中、彼は必死に状況を捉えようとする。周りと言えば大小の限りない力の奔流だけが感じられ、自らの存在がそれに流されそうな恐怖にさらされる。未体験の感覚の中とにかく落ち着こうと考え、先ずは自身の状態を確認するシャーラトン。思考と記憶、その二つは変わりがないようだった。ただし肉体的な実感が伴わない。あるは...

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至宝の探索 12 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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「ときにシャーラトン、騎兵隊の方はどんな様子かな?」不意にかけられたブラーの言葉に、シャーラトンはその内なる力である輝きを震わせた。動揺が心自体を具現化した力の輝きに正直に現れたからである。この問いかけの意図はなんだろうと思いつつシャーラトンは答える。「ふ、副官であるテリシュからは変わりなき事を聞いてますが…」暫しの沈黙の輝きの後、試すような言葉がブラーからかけられた。「君の目からはどうなのかな?...

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至宝の探索 13 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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「霊宿者が継魂である真霊と交わり霊力を行使するのは当たり前だよシャーラトン君。ただし…」ブラーなる輝きが言い淀んだ。「ただしってなんですか?」「…君の疑問に答えよう!ここは間界だ!」「いや、それも聞きたいですけど先程のただしってのは?」しつこく食い下がるシャーラトンに、エイブも声をかける。「ただしとは…」言いかけたエイブに対してブラーが輝きを増した。「…んっうん、ただしくは此処は冥界じゃ。死せる魂が集...

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至宝の探索 14 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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真理に仕える使徒の一員であるジュセピはその深いフードを外し悩みの色を顕にしていた。ただの賊と告げられていた男が古の盟約を逆手にし取引をもちかけてきたことに対してである。かのような下賎なる者が盟約の縛りを匂わせたことだけにとどまらず、その心うちを曖昧にはぐらかし何も読ませなかった事からによる不安のせいもあった。ジュセピが読み取れたものは、かの者の名と身分を示す一辺倒の物のみであり、そのような蛮国で広...

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至宝の探索 15 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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大陸中央部に点在する自由都市アルヘムの宿の一つのある部屋で、ブルトスは安堵していた。古の西の武帝国の中将である彼は、武人としての戦闘力に加え帝国では稀なる英知を抱くものとして、現皇帝より厚く信任を置かれていた。数少ない皇帝の直属として、東の魔王国の牽制を率先し、盟約の執行を行うようその案件を一任されていたのだ。大陸の人的支配を望む帝国と世界の思想的掌握を企む王国はその利害関係により犬猿の仲ではあっ...

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至宝の探索 16 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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「そろそろ戻ってもいいですかね。ってゆうか戻れるんでしょうか…俺は」シャーラトンは既に心の内を隠すこともなかった。目の前の漆黒で巨大な二つの輝きの前ではそんなことなど隠しきれないと開き直ったからである。「もちろだよ」「もちろんだとも」その黒い輝きたちは大いに瞬く。そのわざとらしい瞬きに、ため息の揺らぎを交えつつシャーラトンは揺らぐ。「では、戻ってみます」「うむ」「頑張りたまえシャーラトン君。デザー...

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至宝の探索 17 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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「えっと…、聞きたいことがあるから俺のとこまで来てくれないか?…その姿じゃあれだから、さっきの出で立ちの方が助かるけど」まるで確信しているかのように、シャーラトンは目の前の騎獣に語りかける。その言葉に応えるかのように騎獣は、悦ばしげに先程の少女を象った。「シャーラトン様、ブラー様がお戻りになられたら連絡いたしますから」部屋の主である少女が部屋を出ようとした二人に声をかける。「ああ、わかったよ、………ジ...

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至宝の探索 18 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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館の自室で向かい合うシャーラトンと少女。「君はデザートで間違いない?…だよね」後にわかる複心同体の存在である彼女を感じ発した問いかけを納得の形で独り言のようにしめてしまうシャーラトン。彼女は卓の上にそれぞれに置かれた茶を飲みながら笑みを返す。その茶は、少女を伴って帰宅したシャーラトンに対し何故か感激したかのように迎えた使用人の手によるものだったが。「おれ…ボクの言葉がわかるなら、できれば声にして返事...

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至宝の探索 19 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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「色々と訪ねたいことはあるのだけど…ボクは所謂、霊宿になったのかな?…デザート」部屋の脇に佇む妙なテンションの使用人に若干戸惑いながら、シャーラトンは目の前の少女に問いかけた。「ブラー様のように世間で言われているものとは違いますけど、私のような真霊種を宿した同心複体の存在としてシャーラトン様は霊宿者となります」それに対して笑みをともない答える少女。「ブラー様のように生まれた時から同心複体であり複心無...

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至宝の探索 20 (ファンタジー小説   シーフ 賊と呼ばれた男)

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「シャル様、私になってみますか?」少女の問い掛けにシャーラトンが頷く。途端に変わるシャーラトンの内世界。少女の視ている世界がシャーラトンにも流れ込む。死角なく何処までも広がる視界、目の前の自身の姿は元より少女が向けてもいない左右の様子や背後まで同時に見渡せている。焦点を合わすことなく全てを見通す高見からの視界を驚きと同時に当たり前と思えている自身が其処にいた。そしてその自身の心内さえも少女の瞳は捉...

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