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ひと月前までの僕は終焉のことなど何も興味がなかった。

増え続けるばかりの人口とか無くなりはしない争い、他の奴らと同じようにそんなことは知っていても真面目に考えることさえしなかった。

だって目にみえるものじゃないし、自分の身におこっているわけじゃない。

そう、平和ボケとも呼ばれるこの国の一員である僕は、学校のクラスの中で僕がどんな風に思われてるとか(主に女の子からとかだけど)自分の毎日の事で精一杯だった。

だからひと月前に目の前に現れた、僕の六年後の姿だと名乗るリュートなんてのも、ただの頭のおかしい奴だとしか思えなかったんだ。


「ボクはリュート、荒川流人、未来の君だ」

そう突然名乗ったアイツは、ちょっとだけ僕に似てはいるなと思ったことは確かだったけど。

その言葉も胡散臭かったけど、そのあとの言葉はもっと信じられなかった。

だって世界の終わりはすぐにでもやってきて、そいつが聞くにも耐えられない酷い結果だったからだ。

全てが幸せに結ばれるとは思っていなかった僕だけど、それなりにハッピーは望んでいる。

「えーっと、そうゆうのはいらないから、他の人にしてください。僕は忙しいので」

一応、僕にしては丁重に断ったつもりだった。

何せ僕はそんな荒唐無稽なことよりも、気になる女の子の方が重要だったからだ。

ひと月前のその日は、僕にとって重要な休みであり、意中の女の子をやっとの思いで誘ったあるイベントに出かけるところだったからだ。

デートってことになるだろうか、周りの悪友たちに下げたくもない頭を下げてまで色々と根回しをし、からかい半分の幼馴染にさえ弄られながらもその日にこぎつけたのだった。

六年後の僕が語ることなどに興味はない。

十二年後の人類の結末なんて関係ない。

バッドエンドを危惧するなら、今日のデートもどきの事だ。

残り少ない高校生活を、あと僅かな一年を、今までと同じようにひとり寂しく過ごすのか、季節ごとのイベントを希望の彼女と二人で過ごせるのか、それだけが重要問題だった。

きっぱりと断って駅のホームにとまた歩き出した僕を、引き止めもせずあっさりと引き下がったアイツの事をほんの少しだけ思い、諦めがいいとこだけは僕に似てるかもと思ったのは何かの予感だったのかも知れない。

今、思えばだけど。


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月が変わった今、僕は余りにも変わってしまった僕の状況と心境にようやく追いつけた気がする。

兎に角二月は色々ありすぎた。

色々とのことがらは、そう、あの日、最初のバッドエンドとも言える二月一日の日のことからだ。

自称タイムリッパーと名乗る六年後の僕”リュート”との出会いからそれは始まった。

それは特別な日、幼馴染からの強い押しもあって、その頃から気になり始めていた同学年の女子と初デートとなる記念すべき日だったのだけど。

はっきりと思い出せるリュートとの最初の出会いを。

その日のデート先であるイベント会場に向かう電車の駅でリュートは僕に声をかけてきたんだ。

その前に起こったこと、今では理由がわかるそれは、滑り込むはずの電車が見え始めた頃に訪れた。

ゆらりと歪む感覚、丁度微弱な地震でも感じたようなそんな気持ち悪い感覚、それが僕の身に通り過ぎたあと、リュートが現れ僕に言葉を告げた。

「ボクはリュート、荒川流人、未来の君だ。十二年後の終焉を少しでも良くするために、六年前のボクである君の手助けが欲しい。…信じては貰えないかもしれないけど」

なにか疲れたような顔をしていた年上の青年の発した、そのふざけた言葉を僕はあっさりとスルーした。

「えーっと、そうゆうのはいらないから、他の人にしてください。僕は忙しいので」

一言だけ即断し、僕は滑り込んできた電車に乗り込もうとした。

「やっぱりこれは、何度やっても変わらないな。でも、そのあとのことを変えないとまた、存在が希薄になるから」

多分そんな言葉を呟いていたのはリュートだったのだろうけど、背を向け電車に乗り込む僕には確認ができなかった。

そんなことよりもこのあとの方が大事だったから。

望み薄な未来、ありそうにもないハッピーな日々の妄想に僕は思いを寄せていたからだった。

だから再び、ゆらいだあの嫌な感覚が繰り返されたあと振り返ったホームに誰もいないことに気づいても気にならなかった。

そしてアイツ”リュート”のつぶやきがそれから起こる最初のデッドエンドの始まりだなんて思いもしなかったんだ。


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変な出会いはあったものの、おおむね順調に予定は進んでいる。

順調に予定時刻の電車に乗り、予定通りに目的の駅までつくことができた。

あとは彼女が乗る電車を待つだけだ。


するとまたあの感覚が起きたのだった。

「自己紹介はいいよね?協力してくれる気になったかな?今から」

「しつこいなあそれはできないって…。もしも、もしもだよ。仮に君が僕だとしたら…今日は大事な日だったって知ってるだろ??」

「ああ、勿論知っている…。デートだろ?、…もう邪魔はしないからもう少しだけ話を聞いてくれないか?彼女がくるはずの次の電車の到着まで」

よくわからないけど僕の大事な日の大事な用事をとりあえずわかっているようだったので、
おごるからと言って奴に渡された自動販売機のコヒーを飲みながらもう少しだけ耳をかたむけることにした。


それが間違いだったと今になって思う。

意地汚くあっさりとおごられた僕が。

一口飲んだだけの僕は、猛烈な便意を催してしまったからだ。


とりあえずトイレに駆け込むが、腹痛を伴ったそれは暫くの間僕をトイレにくぎ付けにしたのだった。

三十分あまり格闘は続いたかもしれない。

とうに待ち合わせの時間は過ぎ去り彼女の姿はない。

携帯とかもつながらなくて、ひとまず会場に行こうと思った僕の耳にそれは響いた。

それとは、とてつもない悪い予感を抱きそうなけたたましいサイレンの音だった。


会場の建物は何故かたくさんの警官で包囲されていた。

会場内でどうやら事件があったようだ。

一足先に会場に行ってしまったかもしれない彼女の事が凄く心配になる。



「危ないから入らないでください。イベントも中止です。状況が分かり次第説明をしますので…。………退避!退避してください!!ここも危険です」

大声を上げ始めた警官たちの後方、何か黒いもやもやとした巨大なものが現れた。

そのもやもやとしたものは、見かけによらず実態があるように思える。


なぜならそれはイベント予定会場の壁をぶち破って表れたからだ。




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